ヤリス登場で競合激化? デミオ改めマツダ2 独自の価値と実力は健在か

ライバル車と比較してわかる魅力

2020年2月にフルモデルチェンジ。ヴィッツからヤリスへ車名変更した。
2020年2月にフルモデルチェンジ。ヴィッツからヤリスへ車名変更した。

 また直近では2020年にフィットがフルモデルチェンジを行い、ヴィッツも同時期に一新されて、海外と同じ車名のヤリスに発展した。この2車種の内、フィットは従来と同じく後席や荷室の広さを特徴とするが、ヤリスは性格が変わった。

 従来のヴィッツに比べると、前後席の乗員間隔が37mm縮まり、後席の床と座面の間隔も32mm減っている。そのためにヤリスの後席は、ヴィッツに比べると足元空間が狭まって腰も落ち込む窮屈な座り心地になった。

 またヤリスでは荷室のリヤゲートが寝かされ、背の高い荷物は積みにくい。今後同じプラットフォームを使ってSUV風のヤリスクロス、背の高い空間効率の優れたコンパクトカーを投入するから、ヤリスは以前のヴィッツと異なる前席優先のクルマに仕上げた。

 その結果、ヤリスの性格がマツダ2に近付いた。以前のヴィッツは、フィットとマツダ2の中間に位置したから競争しにくかったが、今のヤリスは、デザイン、機能、商品イメージでマツダ2と真正面から競う。

現行型スイフト(2016年登場)
現行型スイフト(2016年登場)

 2016年12月に登場したスイフトも見逃せない。軽量化に力を入れて車両重量は900kg前後に収まり、1.2Lエンジンでも運転感覚は軽快だ。

 そのいっぽうで内装の質は高い。後席と荷室は狭いが、前席優先で仕上げられ、スイフトも車両の性格がマツダ2に似ている。このように競争相手が増えた。

特別仕様車 15S SMART EDITION(2020年5月)
特別仕様車 15S SMART EDITION(2020年5月)

 そこでマツダ2は、割安な特別仕様車のスマートエディションを加えた。

 1.5Lガソリンエンジンを搭載する1.5Sプロアクティブスマートエディションは、高速域でも作動する衝突被害軽減ブレーキのスマートブレーキサポート、全車速追従機能付きクルーズコントロール、後方の並走車両を知らせるブラインドスポットモニタリングがつく。

 さらに、ハイビーム状態を保ちながら対向車などの眩惑を抑えるアダプティブLEDヘッドライト、360度ビューモニター、7インチセンターディスプレイなどを標準装着して、価格は179万8000円だ。

 この価格設定は、ライバル車のフィット1.3ホーム(171万8200円)、ヤリス1.5G(175万6000円)、スイフト1.2RS(178万6400円)などと同等になる。

新型フィットHOME(2020年2月)
新型フィットHOME(2020年2月)

 マツダ2・1.5Sプロアクティブスマートエディションは、これらのライバル車に比べると、装備を充実させて内装も上質だ。エンジン排気量も1.5Lだから余裕があり、3気筒1.5Lのヤリスに比べると、4気筒とあってアクセルペダルを踏み込んだ時のノイズの粗さを抑えた。

まとめ

 以上のように考えると、マツダ2は検討する価値が高い。1.5Lクリーンディーゼルターボの搭載を含めて、マツダらしい楽しい運転感覚を味わえる。なおかつコンパクトカーは競争が激しいから、ライバル車に対抗すべく価格も割安に抑えた。

 全高を1550mm以下に抑えた立体駐車場を使いやすいコンパクトカー同士を比べると、フィットとノートは後席も広く、マツダ2とは性格が異なる。その点でヤリスとスイフトは似ている。前席を優先させたコンパクトカーが欲しい時は、マツダ2/ヤリス/スイフトを乗り比べると良いだろう。

 そしてユーザー側から見ると、マツダ2はマツダ車の原点でもある。マツダ2の質感や走行性能を高めた車種が、マツダ3、CX-3、CX-30に位置付けられるからだ。

 その意味では、これらの車種が欲しいユーザーも、マツダ2を試乗すると良い。マツダ2に比べてどのような機能と質を高めたのか、いい換えればマツダ3やCX-3の特徴が見えてくる。

 「この違いならマツダ2で十分」という結論に至るかも知れない。こういった選択方法は、欧州車には良くあるが、日本車では成り立ちにくい。ブランド確立を目指すマツダだから可能になったクルマ選びを楽しみたい。

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