1時間の計測を20分に短縮した新手法
取材では、ニュルブルクリンク24時間仕様のGRヤリスを使い、車高や車体の前後傾斜に応じた空力特性を記録する「エアロマップ」の計測が披露された。
走行中のクルマは、加速やブレーキングで車高と姿勢が変わり、それに伴って前後のダウンフォース量や空力バランスも変化する。さまざまな車高条件のデータを地図のようにまとめ、ドライビングシミュレータや実車のセットアップへ生かすのがエアロマップだ。
試験車両はバネとダンパーを外し、代わりに油圧アクチュエーターを装着。フロント車高を固定したままリア車高を連続的に変化させる。従来は条件を変えるたびに風を止める必要があり、約1時間を要した計測が、わずか20分に短縮されたという。
開発はまずCFDと呼ばれる流体シミュレーションで形状を絞り込み、部品を製作して風洞で実機検証。さらにドライビングシミュレータ、サーキット走行へとつなげる。設計から実走までを一気通貫で回せることが中井風洞の真価である。
【画像ギャラリー】時速288kmの風が出せる中井風洞をじっくり見て!(10枚)画像ギャラリーニュルで発生した謎の振動も風洞が解明
ここで話題を、計測対象となった2026年型のニュル24時間仕様GRヤリスに変えよう。同車は「振り切った開発」を合言葉に空力を大幅アップデート。フラットな床下や大型ディフューザー、スワンネック式リアウイングなどを採用し、前年型に対して空気抵抗をほぼ増やさず、ダウンフォースを60%向上させた。
ところが決勝レースでは、夜明け頃に車体の前後方向へ謎の振動が発生。チームはエンジンや駆動系を丸ごと交換してコースへ復帰し、77周を走ってチェッカーを受けたものの、規定の完走条件に届かず公式結果は未完走となった。
GRはレース後、ケルンの風洞も活用してすぐさま原因を分析。その結果、出力とダウンフォースの向上で負荷が増した一方、電子制御式4WDカップリングに走行風が十分当たらず、内部のオイルが高温で劣化していたことを突き止めた。チームはすぐさま対策を実施、フラットな床下に、カップリングへ風を導くNACAダクトを増設した。
この対策済み車両は8月に行われたスーパー耐久オートポリス戦へ投入され、冷却改善の効果も確認できた。トラブル発生>原因分析>対策>結果把握というサイクルが素早く回せるあたりに、GRのクルマづくりの魅力があると感じた。
風洞は空気を測るだけの施設ではない。GRが掲げる「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を、実際のクルマへ落とし込む重要な開発現場なのである。まもなく姿を現すであろうGR GTについても、期待できそうだなあ!
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