トヨタが描く「Factory Automation (ファクトリー・オートメーション)3.0」の次世代工場がスゴい!! TPSとAI、ロボティクスを融合させ、“ヒト中心のものづくり”を次のステージへ

トヨタが描く「Factory Automation (ファクトリー・オートメーション)3.0」の次世代工場がスゴい!! TPSとAI、ロボティクスを融合させ、“ヒト中心のものづくり”を次のステージへ

 ベルギーのブリュッセルにあり、トヨタの欧州の拠点となっているのがTME(トヨタ・モーター・ヨーロッパ)で、一部の記者に未来の生産技術に向けた重要な説明があった。トヨタがロボティクスの分野で大きく動き始めている。

文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、トヨタ

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「ものづくり」を大きく転換させるトヨタの新しいビジネス

Tシャツを畳むロボット。約2週間で動作を学習し、きれいに畳めるようになった
Tシャツを畳むロボット。約2週間で動作を学習し、きれいに畳めるようになった

 ロボティクスとは、ロボットの制御や設計、製作に関する研究のこと。ロボット工学とも呼ばれている。トヨタはAIバスケットボールロボット「CUE(キュー)」の開発を2017年から始め、最新型の「CUE7」では、滑らかな動作を身につけ、華麗なドリブルやシュートができるまで進化した。

 自動車メーカーにとって、次世代車の開発と同じくらい重要なのが「どう効率的に作るか」という生産技術だ。トヨタはロボティクスの技術開発を自社で進め、ヒト型の自律ロボットの技術は世界トップレベル。人を中心に置きながら、モノづくりの生産現場を変えようとしている。

 トヨタが未来の工場で目指しているのは、単純に工場から人をなくす「無人化」ではない。長年培ってきた「1.トヨタ生産方式(Toyota Production System=TPS)」を土台に、「2.AIの基盤モデル」、「3.ロボットのハードウェア」、「4.工場全体を制御するプラットフォーム」、「5.Arene(ソフトウェア基盤)」、そして何より世界各地の、「6.現場に蓄積された人の知恵」を組み合わせ、ものづくりそのものを進化させようとしている。

 トヨタ・ロボティクスがまず対象とするのは自動車分野だが、将来的には自動車以外の製造業、さらには他産業への展開も想定している。つまりロボット単体を開発して販売するという考え方ではなく、トヨタが長年自動車生産で磨いてきた「ものづくりの仕組み」そのものを新しいビジネスへ発展させようとしているのだから、話は尋常ではない!

「Factory Automation (ファクトリー・オートメーション)3.0」とは何か?

匠の技術を入れることでさらに動作はスムーズに効率的な畳み方になる
匠の技術を入れることでさらに動作はスムーズに効率的な畳み方になる

 トヨタが考える未来のものづくりの方向性を象徴するキーワードが「Factory Automation 3.0」だ。Factory Automation 1.0は、従来の自動車工場に代表される設備中心の自動化だ。生産ラインに専用機や産業ロボットを配置し、決められた作業を高速かつ正確に繰り返す。大量生産の生産性を飛躍的に向上させてきた、従来型の工場自動化だ。

 続く2.0では、AGVや自律搬送ロボットなどの導入によって、固定された生産設備だけでなく、工場内の物流まで自動化の範囲を拡大する。設備と設備の間をモノが自律的に移動し、人が行ってきた搬送作業も機械へ置き換えていく段階だ。

 そして3.0では、人型を含む高度なロボットが人と同じ作業空間に入り、人間と協調しながら仕事をする世界となる。ポイントは「人をロボットに置き換える」ことだけではない。人が持つ判断力や技能をAIとロボットへ伝え、逆にロボットによる学習結果も人へフィードバックすることで、人と機械が一緒に進化していく工場を目指していく。

人間の動きをロボットが覚える!? カギは「Hardware(ハードウェア)」

バスケットロボのCUE7はAIによる強化学習により、ドリブルを含め複雑でしなやかな動きができるようになった
バスケットロボのCUE7はAIによる強化学習により、ドリブルを含め複雑でしなやかな動きができるようになった

 フィジカルAIのコア技術が「Motion Capture(モーション・キャプチャー)」。つまり、人や物体の動きをデジタルデータとして記録し、ロボットの動作に反映させる技術。それをトヨタは発展させ、リアルタイムで周囲を認識しながら自律的に動くロボットを開発している。

 バスケットロボCUE7(キューセブン)がその代表例でAIによる強化学習により、ロボットが自ら試行錯誤を繰り返すことで、複雑でしなやかな動きができるようになった。

 プログラミングされ同じ軌道を繰り返す従来型の産業ロボットとの一番の違いは、その場の状況を検知し、それに応じて動きを変えることができることだ。自律的に考えて動くロボットは自動車工場との相性が非常にいい。

 自動車の組み立ては、「同じ作業をひたすら繰り返せばいい」というほど簡単ではない。部品の位置にはわずかな違いがあり、工程ごとに車種も仕様も変わる。人間が目で確認し、手の感覚で微調整している作業が山ほどある。

 将来的には、この先進的なロボットをトヨタ/トヨタグループ=15万台、サプライヤー=25万台合わせて40万台を導入するという。

サプライヤーからユーザーまで全部つなぐ「Factory Control Platform(ファクトリー・コントロール・プラットフォーム)」

トヨタの生産設備が今後急速に変化し、モノづくりを変えていく
トヨタの生産設備が今後急速に変化し、モノづくりを変えていく

 次世代工場を考えるうえで注目したいのが「Factory Control Platform」という考え方だ。従来の工場は、「工場の中をいかに効率よく動かすか」が中心だった。

 しかし、トヨタが描いているのは、部品を供給するサプライチェーンから、トヨタの生産工程、そして最終的にクルマを受け取る顧客までを一本の流れとして同期させようというものだ。

 どのクルマがいつ必要なのか。それに必要な部品はいつ届くのか。工場ではどのタイミングで作るのか。完成した車両をどう運ぶのか。これらがリアルタイムでつながれば、必要なものを必要な時に必要な量だけつくる、トヨタ生産方式の考え方を、デジタル技術によってさらに高いレベルへ進化させられる。

 工場や物流拠点には、完成車、部品運搬車、人、さまざまな移動体が入り交じる。そこを通信やセンシングによって把握できれば、物流の効率化だけでなく、安全性の向上にもつながる。

 ソフトウェア基盤のArene(アリーン)を持つトヨタが物流や交通まで含めたモビリティ全体を統合制御する方向へと、ものづくりの概念を拡張していることがうかがえる。

最後にモノを言うのはやっぱり「現場」だった!

トヨタは2023年に「トヨタモノづくりワークショップ」を開催。「TPS・現場力」×「デジタル・革新技術」をテーマに、様々なモノづくり技術を公開した。写真は貞宝工場での「デジタルを活用した匠の技能の継承」の様子
トヨタは2023年に「トヨタモノづくりワークショップ」を開催。「TPS・現場力」×「デジタル・革新技術」をテーマに、様々なモノづくり技術を公開した。写真は貞宝工場での「デジタルを活用した匠の技能の継承」の様子

 トヨタの強みというと巨大な生産規模やトヨタ生産方式が真っ先に思い浮かぶが、その土台にいるのは現場の人間だ。

 例えばボディパネルのわずかなズレ、塗装面の状態、部品を組み付けた際の感触。数値化しにくい「何かおかしい」を発見する能力は、長年経験を積んだ技能者が持ってきた。

 トヨタには全世界で1万8000人の「匠」と呼ばれる優れた技術者がいる。彼らの技術をセンシングし、データ化し、ロボットへ移植する。そして世界中の工場で使えるようにする。そうすれば、ロボットは単なる省人化設備ではなく、「人間の技を世界へ展開するための装置」になる。国や工場が違っても、TPSをはじめとする生産技術を横展開できる体制そのものがトヨタの武器となる。

2028年の生産設備投資は1兆円規模。そして「モノづくり革命」が始まる

トヨタの展示館である「トヨタ会館」では2026年6月に新展示エリアとして『トヨタのクルマづくり』が新設され、そこでは生産・溶接ロボットなどを見ることができる
トヨタの展示館である「トヨタ会館」では2026年6月に新展示エリアとして『トヨタのクルマづくり』が新設され、そこでは生産・溶接ロボットなどを見ることができる

 BEV、HEV、PHEV、さらには水素など、自動車メーカーは今後さまざまなパワートレーンを同時に扱う必要がある。しかも市場の変化は速い。

 必要なのは、車種や生産量が変わっても柔軟に対応できる工場だ。

 リアルタイムセンシングで動くロボット、サプライチェーンから顧客までを同期する制御システム、そして世界各地の現場に蓄積された匠の技術。

 自動車業界は自動運転といった派手なキーワードに注目が集まりがちだ。しかし年間1000万台規模のクルマを世界へ送り出すメーカーにとって、実際にモノをつくる技術力こそ最大の競争力である。

 トヨタの2028年の生産設備への投資は年間1兆円規模になるという。40万台規模まで視野に入るロボットがそのタイミングから世界の工場で実用化されていく。

 今後劇的に変わっていくトヨタの生産現場は、クルマづくりの枠を超えて次世代のモノづくりのお手本になっていくはずだ。

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