毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はスバル アルシオーネ(1985-1991)をご紹介します。
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文:伊達軍曹/写真:SUBARU
■1985年デビュー スバル初のスペシャリティクーペ
自動車大国アメリカにおける商業的プレゼンス向上のため、まずは北米で先行デビューした2+2クーペ。
約半年遅れて日本でも発売されたが、あまりに突飛なデザインであるとして敬遠され、希に見る不人気モデルとして短い“生涯”を終えた問題作。それが、スバル アルシオーネです。
初代レオーネのあたりからアメリカでも人気となりはじめたスバルは、北米市場でのイメージ向上につながるモデルの投入を決意。それが、1985年1月のデトロイトショーで初披露された「スバル XTクーペ」でした。
極端なウェッジシェイプ(くさび形)を採用したXTクーペはアメリカ人の目を引き、またトム・ハンクスが主演した映画『BIG』に登場させるなどのプロモーション効果もあって、発売当初のセールスはまずまず好調だったようです。
そして1985年6月、XTクーペは「アルシオーネ」と名前を変えて日本でも販売を開始。ちなみにこの車名は、プレアデス星団(和名=すばる)の中で一番明るい恒星「アルキオネ(Alcyone)」に由来しています。
アルシオーネのベースとなったのはスバル レオーネで、エンジンもレオーネ1.8GTターボと同じ1.8Lの水平対向4気筒SOHCターボです。
日本発売時のグレードはVR(4WD)とVS(FF)の2つで、VRのほうは3速ATと5MTが選択できました。
しかしそれよりも、アルシオーネの最大の特徴は「デザイン」だったと言えるでしょう。
リトラクタブルヘッドライトを採用した超くさび形のボディは、国産車として初めてCd値=0.30の壁を突破して0.29をマーク(4WDはCd値=0.32)。
フロントウインドウとリアウィンドウの傾斜角が同一の28度に設定されたその姿は、まるでSF映画に出てくる「宇宙の乗り物」のようでもありました。
またインパネまわりも強烈で、切り立った広い平面にスイッチとメーター類が散りばめられ、シフトレバーはガングリップタイプ。
ステアリングホイールは左右非対称のL字型スポークで、その左右には「コントロールウイング」と名付けられた大量のボタン類が並んでいました。
駆動系のメカニズムに関しては、VRのAT車には「AUTO-4WD」を採用。
これは、急加速時や急制動時、雨天時に、アクセルとブレーキ、ワイパーと連動して自動的にAWDに切り替わるというものです。
1986年3月にはVSに3速AT仕様を追加し、1987年7月にはマイナーチェンジを行ってグレード呼称を変更。そしてATを3速から4速に進化させるとともに、2.7L 6気筒の水平対向エンジンを搭載する「VX」を追加しました。
しかしそれでもアルシオーネの販売状況が好転することはなく、1991年8月には生産終了に。そして同年9月、後継の「アルシオーネSVX」と入れ替わる形で販売終了となりました。
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