■大胆なリニューアル戦略に打って出るも、廃番となった理由
3列シートの7人乗り車としては異例なほどに――特に自然吸気エンジン搭載グレードは――良好なハンドリング性能を持ち、居住性なども決して悪くはなかったスバル エクシーガおよびエクシーガ クロスオーバー7はなぜ、廃番となってしまったのでしょうか?
まず一つは「タイミングが悪かった」というのがあるでしょう。
スバルが満を持してエクシーガを発売したのは2008年。しかし2008年といえば、一世を風靡していたトヨタ ウィッシュやホンダ ストリームなどロールーフミニバンの人気が下火となり、それに代わってハイルーフ+後席スライドドアのミニバンが人気となっていった時期でした。
さらに当時は原油相場が高騰してガソリン価格が上昇し、ハイブリッド車が注目を集めていたタイミングでもあります。
そんななかで、燃費がよろしくないイメージがある(というか、実際良くはない)「4WD」「水平対抗エンジン」「ターボ」というキーワードは、お世辞にも販売に寄与するものではありませんでした。
ということで、エクシーガおよびクロスオーバー7が売れなかった理由は、表層的には「タイミングが悪かったから」ということなのでしょう。
しかしそれ以上に、根本的には「広い意味での“実力”が足りていなかったから」というのが、エクシーガおよび同クロスオーバー7が消えていった理由であると、筆者は見ています。
スバル エクシーガは、「子育てやその他の理由で3列シートが必要ではあるが、いわゆる走りの気持ち良さもあきらめたくはない」と考える層のために開発された車でした。
そのように考えるユーザー層をさらに分解すると、それは下記のとおりとなります。
1. 一部のスバリスト(スバル車のフィーリングが好きなスバリストのなかで、たまたま3列シート車が必要になる人生ステージにいる人)
2. 一部のミニバン愛用者(スバリストではないミニバン愛用者で、できればもっと走りのいい3列シート車に乗り替えたいと考えている人)
上記の1また2に該当する人もそれなりにいるはずですが、「それなり」の数でしかありません。マーケット全体から見れば少数派なのです。
マニアックなスポーツカー等は別ですが、一般的な車の場合は、そのような少数だけを相手に自動車の開発および販売ビジネスを行っても絶対に利益は出ません。利益が出ないどころか、トントンにもならず赤字となるでしょう。
上記の1と2をコアターゲットにしつつ、「その周辺にいる人」も巻き込むだけの商品力というか「なんとなくの魅力」がないことには、どうにもならないのです。
近年のスバル車で言えばXVが、そのような「決してコアなスバリストではない“浮動票”」を獲得するだけの「なんとなくの魅力」を備えた商品でした。
現行型XVの発売1カ月後の受注のうち、スバル車以外からの乗り替えが約6割を占めていたというのは有名な話です。
しかし残念ながら、エクシーガおよびエクシーガ クロスオーバー7には「それ」がありませんでした。
「それ」というのは、「なんかよくわかんないけど、いいじゃん!」と人に思わせるだけのデザインやたたずまい、あるいは物語です。
もしもそういったものがエクシーガにあったなら、決してバカ売れするタイプの車ではないでしょうが、「そこそこの数は売れ続ける(=それなりにソロバンは合う)稀有な実力派7シーター」として、歴史を刻んでいけたのかもしれません。
なまじいい車だっただけに、そこが残念でなりません。
■スバル エクシーガ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4740mm×1775mm×1660mm
・ホイールベース:2750mm
・車重:1570kg
・エンジン:水平対向4気筒DOHC、2498cc
・最高出力:173ps/5600rpm
・最大トルク:24.0kgm/4100rpm
・燃費:13.2km/L(JC08モード)
・価格:259万2000円(2014年式 2.5iアイサイト)
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