■出てくるのが早かった!? ベリーサの敗因とは
「従来からある“車格”という概念を打ち破る!」という高い志を持って生まれ、そして実際、決して悪い車ではなかったマツダ ベリーサはなぜ、1代限りで生産終了となったのでしょうか?
それは、冒頭でも申し上げましたが「結局、すべてが中途半端だった」ということなのでしょう。
前段で触れた新車当時のプレスリリースには、さまざまな美辞麗句が並んでいます。
エクステリアについては、「伸びやかなラウンドシェイプを基調として」「上質感や高密度感を際立たせるために面の張りやコントラストの強調等に注力」「従来のコンパクトカークラスを超えるスマートなたたずまいを実現」と。
そしてインテリアに関しては、「乗り込んだ瞬間にクラスを超えたくつろぎを感じられる室内空間」「インストルメントパネルやシートは、端正で仕立てのよさを感じさせるデザインおよびクオリティ」「メーカーオプションとして、インテリアをより上質な雰囲気で満たすレザーパッケージを設定」等々と書かれています。
これらの文言の一部については、「確かにそうかもしれないな」と納得できます。
しかし全体としてのリアルなマツダ ベリーサは、エクステリアデザインは――決してかなり悪いわけでもないのですが――締りがない寸胴タイプで、インテリアも、頑張ってはいるのですが、それでも「小さな高級車」と呼ぶにはやや抵抗を覚える世界観でしかありませんでした。
そして肝心のレザーパッケージは、ハーフレザーシートのレザー部分も、ステアリングホイールのウッド調部分の質感も、さほどのものではなかったというのが実情です。
繰り返しますが、ベリーサの内外装は決してそんなに悪くはないのです。
しかし、「じゃあ他の国産コンパクトカーと比べて40万円ぐらい高いカネを投じてでも手に入れたい何かが、そこにあるか?」と問われたなら、「……まぁ無いかもしれませんね」と答えざるを得ないデザインと質感だったのが、マツダ ベリーサという車の弱点でした。
「車格などというくだらないモノにはとらわれない車作りをするぜ!」という、その意気やよしなマツダ ベリーサでしたが、残念ながら、実際はやや力足らずでした。
しかしベリーサは今、中古車としてはそこそこの人気を誇っており、この年式の国産コンパクトカーの中古車としてはまずまず高めの相場で、多数の物件が全国で売買されています。
その人気っぷりから考えると、もしかしたら――本稿では新車当時のベリーサにいろいろと文句をつけましたが――結局は「小さな高級車というものに、当時はまだ時代が追い付いていなかっただけ」なのかもしれません。まぁ、わかりませんが。
■マツダ ベリーサ 主要諸元
・全長×全幅×全高:3975mm×1695mm×13530mm
・ホイールベース:2490mm
・車重:1100kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1498cc
・最高出力:113ps/6000rpm
・最大トルク:14.3kgm/4000rpm
・燃費:16.8km/L(10・15モード)
・価格:153万3000円(2004年式 FF)
【画像ギャラリー】出てくるのがもうすこし遅ければ…!!? 志半ばで表舞台から姿を消したマツダ ベリーサをギャラリーでチェック!!!
コメント
コメントの使い方「コンパクト・ミーツ・ラグジュアリー」の日産ティーダというライバルの存在も忘れてはならない。