■シティの系譜を途絶えさせたのは「ホンダ自身」?
ワンダーシビックなどで培った低重心フォルムの採用により、実はなかなか優秀なコンパクトカーに仕上がっていたはずの2代目ホンダ シティ。
それがさほど売れず、結果としてシティという“お家”を断絶させてしまった理由。
それは、ちょっとカッコよく言うなら「理想と志が現実に負けた」ということであり、あえて偽悪的かつ俗っぽく言うのであれば「ホンダの技術者は商売というものをわかってなかった」ということになるのかもしれません。
2代目ホンダ シティは、前項で少し触れた「ヒューマンフィッティングテクノロジー」に基づき、動力性能や走行性能、経済性などの機能と効率を徹底追求しつつ、ドライバーの感覚と感性をも満たすクルマを作ろうじゃないか――ということで、初代の大ヒットの源だったトールボーイスタイルをいさぎよく捨て、まったく新しいスタイルのコンパクトカーとして誕生しました。
エンジニアの理想がどこまで具現化されたのかは、筆者は「中の人」ではないので分かりません。
しかし2代目シティは「エンジニアの理想がけっこう詰まっていた一台」であったことは間違いないでしょう。
しかしそんな理想も、カーマニアではない大多数の「一般的な消費者」の前では無力でした。
根拠と自信を持って提示した低重心フォルムは「なんか初代より狭そう」「地味でつまんない」と一蹴され、新開発の優秀なSOHCエンジンは「DOHCじゃないの?」「ところでターボは?」と言われ、実用小型車としてはかなりの上位に入るはずの走行性能についても「や、小型車に求めてるのはそこじゃないですし」と言われ、ついでに「ところで、もう少しお安くならないんですか?」と尋ねられました。
上記のカギカッコ内はすべて筆者の勝手な創作であり、当時の消費者に取材したうえでのリアルなコメントではありません。
しかし、作ったモノが売れないというのは要するにこういうことであり、ブランドが壊れるときというのは、得てしてそんなものです。
「小型車の理想」を追求するのではなく「商売」を優先するのであれば、初代に似たトールボーイスタイルをお気楽に継承したり、ロー&ワイドなフォルムにするにしても、もう少しわかりやすいギミック(仕掛け、からくり)を各所に配した、言葉は悪いですが子供だまし的なデザインを採用したならば、2代目シティはもっと売れたのかもしれません。
しかしどうなんでしょうか?
売れた初代の亜流を安易に作り続けたり、軽薄なギミックでしかないデザイン要素を取り入れたりすることは、短期的な観点では有効なのかもしれません。
しかし「長期的にブランド=ホンダを成り立たせる」という意味では、逆効果でしかない可能性も高いはずです。
2代目シティはどういう方向で行くべきだったのか。筆者は経営の素人ですのでわかりませんし、経営の玄人でも、しょっちゅう間違える類の問題かと思います。
しかしいずれにせよ2代目ホンダ シティは、造形的には地味ですが、内面としてはド派手に攻め、そして残念ながら討ち死にした、偉大な生産終了車でした。
■ホンダ シティ(2代目) 主要諸元
・全長×全幅×全高:3605mm×1620mm×1335mm
・ホイールベース:2400mm
・車重:780kg
・エンジン:直列4気筒SOHC、1296cc
・最高出力:100ps/6500rpm
・最大トルク:11.6kgm/5500rpm
・燃費:16.2km/L(10モード)
・価格:124万4000円(1992年式 CZ-i 5MT)
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