大傑作ホンダシティ失速の理由 一大旋風からの暗転【偉大な生産終了車】

大傑作ホンダシティ失速の理由 一大旋風からの暗転【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ シティ(1981-1994)をご紹介します。

【画像ギャラリー】初代からターボ、ターボII そして2代目まで! 歴代ホンダシティをギャラリーでチェック!!

文:伊達軍曹/写真:HONDA


■1981年に登場 一大旋風を巻き起こしたシティ

 今までにない斬新なトールボーイスタイルを採用して大ヒット作となった初代を経て、2代目は「ギミックなしの本格派」へと進化。

 だが市場からは「地味」「普通すぎる」としかとらえられず、その後あえなく廃番となったコンパクトカー。それが、ホンダ シティです。

 1981年11月に発売された初代ホンダ シティは、冒頭で申し上げたとおりの斬新なトールボーイスタイルと、英国のスカバンド「マッドネス」を起用したユニークなCMなどの効果により、一大旋風を巻き起こしました。

ホンダ 初代シティ(1981年)。「トールボーイ」と呼ばれた斬新なデザインが人気を博し、大ブームを巻き起こした。全長×全幅×全高は3380×1570×1470mm

 1982年には「ターボ」を追加し、翌1983年にはブルドッグの愛称で親しまれることになるインタークーラー付きの「ターボII」も追加。

 さらには1984年にカブリオレも追加するなどして、初代ホンダ シティは「遊び心あふれるコンパクトカー」として、当時の主に若年層の心をがっちりつかみました。

 そして1986年10月にシティは2代目へとフルモデルチェンジされたわけですが、2代目は車名こそ同じシティですが、初代とはまったく異なるニュアンスの一台でした。

 そのフォルムは、後に「クラウチングスタイル」と呼ばれることになるロー&ワイドなもので、初代のトールボーイスタイルとはまさに真逆。

ホンダ 2代目シティ(1986年)全高は初代の1470mmから1335mmへと大きく引き下げられた。全長・全幅も3380→3605mm・1570→1620mmと大型化されている

 搭載エンジンは、わかりやすいターボ付きではなく一見地味な1.2L SOHC(ただし16バルブ)ですが、これは高回転域までシュンシュン回る、いかにも当時のホンダらしい新開発のエンジン。トランスミッションは5MTまたは4速ATです。

 トールボーイスタイルを廃止したことで車内は狭くなったようにも思えますが、実際はタイヤをギリギリ四隅に配置しているため、高さはさておき室内前後長は十分でした。

 サスペンションは前がストラット式で後ろが3リンク式。

 低い重心と優秀な足回り、そしてSOHCながらよく回るエンジン、さらにはロングホイールベースによるまあまあ広い室内空間により、2代目のシティは「かなり気持ちよく走れるコンパクトカー」に仕上がっていたのです。

 これは、フルモデルチェンジの際にホンダの技術者たちが意識した、性能と感性とを高次元で融合させる「ヒューマンフィッティングテクノロジー」を、まさに具現化させた結果だといえるでしょう。

 しかしそんな2代目シティは、市場では率直にいってあまり売れませんでした。

 初代のインパクトが強すぎたのか、あるいは2代目が「地味すぎる」と受け取られたのかは不明ですが、とにかく販売成績は“惨敗”というほどではないにせよ、確実に“いまひとつ”ではありました。

 そのためホンダはいくつかの特別仕様車をリリースしたり、1988年にはエンジンの変更と内外装のリフレッシュを中心とするマイナーチェンジを行ったりしましたが、2代目シティの販売はなかなか上向きには転じませんでした。

 そのためホンダは1994年3月にシティの生産を終了し、翌1995年12月には販売のほうも終了に。

 大きなインパクトを伴ってこの世に登場した「シティ」という車名は、この時点で途絶えることになりました。

次ページは : ■シティの系譜を途絶えさせたのは「ホンダ自身」?

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