今夏、ニュースで「キー閉じ込み」による子どもが車内に取り残された事故が何度か報道された。どのケースも子どもがキーを触ったことで、子どもだけが車内に取り残されてしまい、熱中症の危険があることからガラスを割って救助するという事態となった。
近年の自動車はスマートキー(電子キー)が普及し、キーが車内にあればロックがかからないようにするセーフティ機能が付いている。そんなスマートキーにも関わらず、いまだにJAFの出動件数は年間で約15万件もあるという、なぜなのだろうか!?
その理由と、もしそのような事態となった時にどう対処すればいいのか? もしもの時のために知っておいてもらいたい。
文/高根英幸
写真/Adobe Stock(yamasan@Adobe Stock)
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■ヒューマンエラーだけではない「キー閉じ込み」の原因
スマートキーが導入されて10年以上が経過している。もちろん初期のスマートキーと最近のモノでは、ドアロックなど使い方の方法も変わってきているが、そもそもキーレスエントリー(リモコンドアロック)が導入されてからというもの、キー閉じ込みは起こりにくい仕様となっているハズなのだが、相変わらずキー閉じ込みは数多く起こっている。
車内で待たせていた子供やペットがドアをロックしてしまう、というハプニングは毎年のように起こっている。しかしキー閉じ込みは、JAFのロードサービスだけで年間15万4742件(一般道路+高速道路)も発生しているから、そのような車内閉じ込め事故ばかりではないのだ。大半は車内は無人でペットもおらず、ドライバーの行動がきっかけでキー閉じ込みは起こっている。
先日、JAF東京支部にてロードサービス隊員から直接話を訊いた際には、スマートキーのボタンでトランクだけを開けた時にキーを荷物と一緒に積み込んでしまい、トランクを閉めてしまったことによるキー閉じ込みが増えているとのこと。しかし調べてみると、どうやらそうしたドライバーのうっかりミスばかりがキー閉じ込みを起こしている訳ではないようだ。
ドアロックをスマートキーのボタンで解除しても、そのままドアを開けずにいると一定時間が経過すると再びドアをロックする機能により、荷物だけ積み込んでドアを閉じておくとドアがロックされてしまうクルマもある。これはドライバーが誤ってボタンでロックを解除してしまったのに気付かず、クルマから離れてしまった場合に車上荒らしなどに遭わないようにする防犯上の配慮なのだが、これが裏目になってしまうことがあるようなのだ。
この機能は本来、室内にスマートキーがあればドアロックしないようになっているのだが、スマートキーは人が身に付いていることでアンテナとなって電波を送受信しやすくなっており、後席などに荷物と一緒に置いてしまったような場合、感度が低下してしまうこともあるようだ。さらに内蔵電池の電力が低下することで動作が不安定になってしまうケースもある。
電池切れになったスマートキーも、そのままでは当然使えない。車種によって異なるが、スマートキーの電池交換を促す機能があり、警告してくれるので、そうなったら速やかに電池交換しておくことだ。
スマートキー自体の誤作動もあり得ない事態ではない。複雑なソフトウェアで制御されており、弱電系の電子制御である以上100%の動作保証はできないし、いつかは壊れるもので、それがいつなのかは誰にも分からない。ほかの機器による電磁波や電波により壊れる場合あるし、落とした衝撃で内部が破損することもあり得る。
電子キーはセキュリティ上、メカニカルキー(物理的な鍵、従来のクルマのキー)より安全性が高いとされている反面、物理的なキーではない以上、いざトラブルが起こるとメカニカルキーよりも対応は難しくなる。スマートキーとなったことで、キーの所有者はドアロックやエンジンの始動をボタン1つで行なえる反面、何かハプニングが起こればお手上げとなってしまうのである。
近年、「リレーアタック」と呼ばれる電波を増幅することでスマートキーのクルマを盗み出す手口が話題になっているが、これはスマートキーの利点を悪用した犯罪だ。ちなみにこの犯罪のメカニズムは、本来電波強度が高いのはスマートキーを持つオーナーが近くにいると判断することを利用したもので、ドアハンドルのボタンなどを押すとオーナーが押したと認識することでドアロックを解除、そしてエンジンスタートキーを押すことでエンジンが始動してしまうのだ。
ユーザーの経験談などから、実際にスマートキーによってトラブルが起こった例も見つけられるので、同一車種のオーナー同士でつながることにより情報を共有することが、予防策ともなるだろう。
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