シビックセダン販売終了!! ホンダが手放してはいけないもの

■復活からわずか3年で終了 シビックセダンはなぜ埋もれたのか

 シビックの経緯を見ると、1995年に発売された6代目までは、3ドアハッチバックも用意されていた。ボディサイズと価格も手頃で好調に売れた。

 ところが2000年登場の7代目では、3ドアハッチバックが廃止され、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の長い5ドアハッチバックとセダンに絞られた。この直後の2001年にコンパクトで実用性の優れた買い得な初代フィットが発売され、2002年には国内販売の総合1位(軽自動車を含む)になる。シビックの人気がフィットに移ってしまった。

 さらに2005年に発売された8代目シビックは、3ナンバーサイズのセダンのみになったから、売れ行きを大幅に下げた。この後、2010年にシビックは一度国内販売を終えている。

2000年に発売された7代目シビック。「スマートシビック」という愛称で、広い室内を売りにしていたが、2001年に登場したフィットに人気を奪われた
フィットとの差別化を図るため、セダンのみの設定となった8代目シビック。しかしセダン人気が低迷する国内市場では苦戦することとなった

 その後、イギリス製のシビックタイプRユーロやタイプRを輸入販売したが、あくまでも一時的な措置で継続性はなかった。

 そして、現行型のセダンを寄居工場で製造することが切っかけになって、2017年に現行シビックが改めて国内で復活した。この売れ行きが、再び伸び悩んでいるわけだ。

 販売不振の理由は大きく分けて2つある。まずは先に挙げたフィットの存在だ。フィットはコンパクトで運転のしやすいボディを備え、車内は広く走りもいい。ホンダ独自の技術に支えられた実用性と楽しさを兼ね備え、6代目までのシビックと同様の特徴を盛り込んだ。かつてのシビックは、今日のフィットといえるだろう。

2001年に登場した初代フィット。圧倒的なパッケージングとコストパフォーマンスで大ヒット。シビックを一気に追い落としてしまった

 ふたつ目の理由は、現行シビックが日本のユーザーに寄り沿わなかったことだ。まず2017年7月の発売タイミングから失敗している。この時期には、大人気のN-BOXが現行型にフルモデルチェンジされ、先代フィット、現行ステップワゴン、現行シャトルも規模の大きなマイナーチェンジを実施した。

 新型ラッシュによって販売店が慌ただしい状況で、一度廃止されたシビックを復活させても、埋もれるのはわかり切っていただろう。2018年の前半には、ホンダの新型車はほとんど登場しなかったから、発売を少し遅らせても効果的な販売促進を実施すべきだった。

 中高年齢層を中心にシビックの記憶を蘇らせ、再び乗りたい気持ちにさせるようなプロモーションをすれば、その後の動向が違ったかも知れない。開発者は「ウチはそういうところ(販売促進など)が不得意だから…」とコメントした。

 発売後も目立った展開は見せていない。開発者は「ハッチバックの6速MT比率が予想以上に高い。タイプRとは違う日常的な運転の楽しさが喜ばれている」と述べたから、その魅力をさらに引き出す特別仕様車などを設定するかと思ったが、そうはならなかった。2017年に発売した後、マイナーチェンジを実施したのは、2020年1月になってからだ。

 マイナーチェンジの内容は、外観の小さな変更と、ホンダセンシングの全車標準装着程度になる。安全装備の充実は大切だが、シビックの魅力をさらに際立たせるような変更、あるいは新規グレードの投入などが欲しかった。

 今では軽自動車のN-BOXが、国内で販売されるホンダ車の30%以上を占める。軽自動車全体では、50%を超えてしまう。そこにフィットとフリードを加えると、国内で売られるホンダ車の約80%に達するのだ。

 今の国内におけるホンダのブランドイメージは「小さな自動車を造るメーカー」だ。シビックのようなクルマは、今の日本では売りにくい商品だから、発売時期を選び、その後も1年にひとつは変化を与えて話題性を維持する必要があった。

 手間は要するが、上手に活用すれば、ホンダのブランドイメージを高めることが可能だ。シビックタイプRはその役割を担っている。ただしフィットとシビックタイプRでは距離が開きすぎだから、その間に「6速MT比率が予想以上に高く、タイプRとは違う日常的な運転の楽しさが喜ばれている」ハッチバックを位置付けて魅力的な商品展開を実施すれば、ホンダのイメージリーダーになり得る。

 シビックセダンはハッチバックと同じテイストで中途半端だったが、もう少しフォーマルな仕立てにするとよかった。寄居工場製でも、セダンにこそ、イギリスの雰囲気が大切なのだ。フロントマスクなど、基本部分をシビックセダンと共通化するインサイトのような印象に仕上げるとよかった。あるいはセダンは国内生産なのだから、モデューロXの設定は可能だったろう。「どうせ売れない」と諦めていたら、埋もれるだけだ。

ステップワゴン、ヴェゼル、S660に設定され、その走りが高い評価を受けるモデューロX。スポーティさを売りしているシビックにこそ欲しい

 シビックは国内市場から一度撤退して、そのあとに販売を再開した商品だから、今後もう一度撤退すると二度目の復活は望めない。残されたハッチバックとタイプRは、モデューロXや魅力的な特別仕様車の追加、商品力を維持できる改良、工夫を凝らした販売促進などにより、大切に売り続けて欲しい。

 N-BOXが絶好調に売れる今だからこそ、ユーザー/販売店/メーカーにとって、シビックが大切な存在になっている。

【画像ギャラリー】かつての名門車はどこへ行く!? 歴代シビックの姿を振り返る

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