なぜマツダの走りはプレマシーが手本になったのか? 原点はまさかの絶版ミニバン!?

ロードスターやCX-30にも通ずるプレマシーの走り

 その後、ロードスター(現行モデル)に試乗した時、このときのプレゼンテーションを思い出したもの。

 なるほど、マツダのクルマ造りはあのときのプレマシーと変わっていないわ、と。まるでポルシェのような、どのクルマも乗れば「ああ、コレMAZDAね」と分るようなハンドリング。これはマツダ3にもCX-30にも共通するものだ。

プレマシーに感じたマツダのクルマ造り、ハンドリングはマツダ3、CX-30へにも繋がる
プレマシーに感じたマツダのクルマ造り、ハンドリングはマツダ3、CX-30へにも繋がる

 当時、プレマシーのこのハンドリングと乗り心地のバランスは、どのライバルをも凌駕していた。いや、現在でもあの頃のプレマシーに乗れば、誰もがコレいいね!というに違いない。

 筆者自身、それまでマツダのミニバンがこれほど進化するとは思ってもいなかったのだ。

 このフィーリングは現在のCX-8に共通する。プレマシーの生産終了とともにマツダはミニバンを卒業しクロスオーバーSUVの方向に舵を切った。そう、それがCX-8であり北米で販売するCX-9だ。

CX-8は、ロードノイズというプレマシーが抱えていたテーマを解決した
CX-8は、ロードノイズというプレマシーが抱えていたテーマを解決した

 思い通りのハンドリング、しなやかで乗り心地を優先したサスペンション。だがCX-8はロードノイズというプレマシーが抱えていたテーマをしっかりと解決している。

 人の声を遮るノイズ(周波数)を低減するという手法は、3列目との会話も大声を出さずに可能にしているのだ。

 プレマシーのデザイン、なにもスタイリングにこだわっただけのものではない、凄いのはエアロダイナミクス。Cd値0.30というミニバンとしては驚異的な空力性能を持っていたのだ。

ミニバンなのに空力にもこだわる? 真摯なクルマ作り

フロントグリルはエンジン冷却のために開口部を大きくした。また、ボンネット後端部に三日月形の形状をつけて、空気の流れをスムーズにした
フロントグリルはエンジン冷却のために開口部を大きくした。また、ボンネット後端部に三日月形の形状をつけて、空気の流れをスムーズにした

 もちろん、一番の目的は燃費の向上。開口部の大きなフロントグリルはエンジン冷却に必要なエアを確保。それによってエンジンルーム下に大型のカバーを装着でき、リフトの原因となる下面の空気の流れを整流していた。

 また、ボンネット後端部に三日月形の形状をつけることでフロントガラスへの空気の流れをスムーズにしていたのだ。エアロダイナミクスに関しては前後のリフトバランスを最適化していた。

2005年から2010年まで販売された2代目プレマシー
2005年から2010年まで販売された2代目プレマシー

 旧型でリアに対してフロントのリフトが少なかったことから、新型ではフロントのリフトを多少多くとって前後バランスを改善したのだ。

 あの当時、ミニバンでここまでエアロダイナミクスにこだわっていたことは珍しい。確かに、ボディ下面を覗くとアンダーパネルはフロントに集中していて、フロントタイヤ前方など複雑な処理がされていた。

 そのためフロントに集中するアンチリフトを、逆に落としていたというのだ。レーシングカーに例えれば、フロントのダウンフォースを落としたということ。

 クルマを新しく造りかえればリアのリフトは減らせる、その時にフロントは本来のアンチリフトに戻せばよい。

 惜しげもなく空力の内密情報を暴露してしまうあたり、やはり真摯に開発に取り組んでいる証拠であり、いつでもイイくるまが造れるという自信をあの頃のプレマシー開発陣に見ることができた。

 軽量化でも当時のプリウスα(7人乗り)が1480kgに対して電動スライドドアという重い荷物のプレマシーは1500kgだった。

 総合面でしっかりとクルマ造りを見つめ始めた今のマツダの原点を、あの時のプレマシーに見ることができると思うのだ。

【画像ギャラリー】2018年に生産終了したマツダ プレマシーをみる

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