■国産スーパースポーツのライバルと比べて健闘のGT-R
GT-Rの国内における新車登録台数は少ない。コロナ禍の影響を受ける前の2019年において、1カ月当たり60~70台であった。日産「ノート」が1カ月に約1万台登録されたのに比べると圧倒的に少ない。
スポーツカーも商品である以上、数多く売ることは大切だが、ノートなどのコンパクトカーや日産「デイズ」のような軽自動車とは役割が根本的に違う。GT-Rは日産で最高の走行性能を誇るスポーツカーだから、日産のブランドイメージを高める役割も大きい。存在すること自体に、価値のあるクルマだ。
ノートやデイズも、GT-Rを開発している日産の商品と考えれば、市場の印象が違ってくることもある。GT-Rを上手に宣伝すれば、ほかの日産車の売れ行きにもいい影響を与えられる。
だからこそGT-Rは、前述のとおり1~2年に一度は改良を実施する。生産台数と開発コストのバランスにより、フルモデルチェンジは困難だが、改良によって着実に進化させてきた。GT-Rはスーパースポーツカーなので、常に最高峰の性能を備えることが不可欠になるためだ。
たとえ動力性能の数値やデザインが変わらなくても、走行安定性と乗り心地のバランスなどを進化させ、走りを洗練させることが大切になる。そうなれば2008年に購入したユーザーが、2014年、2020年と新型に乗り替えても、進化を実感できて高い満足度を得られる。
そしてGT-Rの売れ行きは、高性能なスポーツカーのなかでは決して低くない。フェアレディZは、モデル末期でもあり、2019年の1カ月平均の登録台数は50台前後だ。GT-Rの60~70台に比べて少ない。同様にレクサス「LC」は50~60台、ホンダ「NSX」は1~2台だ。
この市場はむしろ輸入車が強く、フェラーリは、シリーズ合計では1カ月平均で70~80台を登録している。スーパースポーツカーの分野では、輸入車を選ぶユーザーも多い。数年後に売却する時の金額(新車価格に占める売却額の割合)が、日本車を上まわることも影響している。
販売店では「GT-Rは少量生産車とされますが、最近になって問い合わせが増えています。GT-Rが現行型で生産を終了するかも知れないといった噂が流れていることも影響しているでしょう。特に変更を加えていないのに、受注が伸びる兆しが見られます」という。
■ファンとの絆を守るためにも配慮が必要
このようにGT-Rは特別な存在だから、各種の法規や規制によって生産の継続が困難にならない限り、終了することはないだろう。
特に今の日産は、日本国内を含めてブランドの再構築を行っている。今後はSUVの「エクストレイル」がフルモデルチェンジを行い、2021年には電気自動車で優れた走行性能を発揮する「アリア」も登場する。コンパクトカーでは「ノート」のフルモデルチェンジも控える。
各カテゴリーが一斉に新型に刷新されるので、ブランドのイメージリーダーになるスーパースポーツカーのGT-Rも、フルモデルチェンジは無理だが大幅な改良は施すだろう。
海外で登場した改良型のGT-Rは、通信機能を充実させるなど、装備も進化させている。従って今後日本国内にも導入されるが、その予定が曖昧では、ユーザーの不満が高まってしまう。GT-Rのようなスーパースポーツカーでは、先進性も大切な魅力だ。近々改良を実施するのであれば、その前に愛車の車検が満了するとしても、改良型を待って乗り替えたいと考える。
従って海外で改良型を発表した場合は、せめて国内の導入時期も明らかにして欲しい。その時期がわからないと、ユーザーは購入計画を立てられないからだ。
とりわけGT-Rでは、前期/中期/後期と数回にわたって乗り替えるユーザーが多い。長年にわたるGT-Rの熱心なファンだから、変更の可能性が伴う大雑把な時期でもいいから、いつ頃買えるのかを明らかにすべきだ。
このような配慮をすれば、GT-Rを通じて、ユーザー/販売店/メーカーの絆がさらに強くなる。
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