■2022年以降のホンダPUにまつわるさまざまな「噂」
ホンダはその可能性を捨てる。
もちろん、2022年以降のホンダPUには多くの噂がある。第一はレッドブル側から発信された、ホンダPUの完全受け継ぎ。つまりミルトンキーンズのホンダファクトリーごと2022年向けPUをレッドブルが引き継ぐというものだ。もちろん、レッドブルの希望的観測からの話しのはずだ。
ホンダPUを失えば(レッドブルは)、ルノーしか落ち着く先がなく、それもごく通常のカスタマー仕様、もちろん使用料を支払わなければならない。さらに、このPU問題が悪化すればレッドブルグループのF1撤退も考えられないことではないのだ。
しかし、レッドブルへ完全譲渡という選択をホンダがすることはないように思える。ここに至るまで4期に渡るホンダF1への関わりから、撤退時に第三者へ技術的な譲渡を行った歴史はホンダにはないのだから。
■無限ブランドでのホンダエンジン存続はあり得る?
したがって次の可能性はホンダワークスが撤退しても、第2期終了時のように、ホンダPUを無限バッジで継続する方法だ。
第二期撤退以後、無限ブランドのV10エンジンはティレルやジョーダンなどに搭載され開発が続けられ、複数回の優勝を含めてプライベートチームでそれなりの成功を収め、第3期のワークス活動へと繋げていった。
今回もこの方法論もあるはずだが、残念ながら現在の無限ではリソースがなく、ホンダ本社は決してこの方法を選ばないはずで、さらにこれがレッドブルへの開発移行へも絡んでくる。
現実にミルトンキーンズの施設は、無限施設との併設から出発していて、ホンダと無限の複雑な問題が絡みレッドブルへのシンプルな移行は極めて難しいはずだ。
さらに、ホンダPUをレッドブルに譲渡するにしても、それなりのノウハウを持つエンジニアが必要だ。ミルトンキーンズの現地雇用のエンジニアはそのまま移行も可能だがホンダ本社スタッフを渡すわけにはいかない。
現実にこれまでの開発の全ては、日本のさくら(編注:栃木県にある技術開発・研究施設)で行っているのだから、レッドブルへは完成型PUの譲渡しかないわけで、これではエンジンサプライヤーの域を出ない。
■ホンダがもたらした希望とF1存続の可能性
ホンダが名目上撤退する以上、さくらからの人材出向はないはずで、もしも必要ならばホンダのエンジニア達はホンダを辞職し、レッドブルに雇われる形をとらざるを得ない。ホンダだけではなく、日本のビジネス形態、ビジネスメンタリティではこれを実現させるのは極めて難易度が高い。
大企業ホンダを捨てて、何年続くかの保証もない異国への転職など日本型の一般社会では通用しないメンタリティなのだから。
ホンダF1は、日本の他のいかなるメーカーでもできなかった挑戦を続けてきた。
もちろん大きな成功は第2期だが、それぞれの時代で世界を見つめる若者達に、そしてオジさん達に大きな夢と憧れを与えてくれたのだが、いつも撤退時には世の中は甘くはないと教えながら去っていった。そして今回もその例に漏れない。
2022年のF1に、ホンダPU残留の可能性は少ないと思う。それでもホンダ撤退の撤回と言う朝令暮改を信じてみたい。それが真のホンダファンの心情なのだ。
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