自動車の“心臓”は、100年以上ずっと内燃機関=エンジンだった。いっぽう、ここ最近、EVなどモーターが新たなパワーユニットとして注目を浴びている。
「内燃機関にはもう進化の余地はあまり残されていない」。そう思われ始めたなか、技術革新の『壁』をうち破った2つのエンジンが、まもなく市販化に漕ぎ着けようとしている。
可変圧縮比を世界で初めて実現した日産のVCエンジンとマツダのSKYACTIV-X。2つのエンジンが、内燃機関の新たな歴史を切り開く!!
文:鈴木直也/写真:NISSAN、MAZDA
ベストカー2017年12月10日号
ディーゼルでしかできなかった『圧縮着火』を実現
内燃機関が生まれてから140年、これだけ長いことやってると有望な技術革新のネタは掘り尽くしたかと思われていたが、最近は注目の新技術が次々に登場している。
で、その注目の新技術ナンバーワンは、いうまでもなくマツダのSKYACVTIV-Xだ。
内燃機関の効率(熱効率)を高めるにはさまざまなアプローチがある。たとえば、圧縮比(膨張比)を上げるなんてのがポピュラーな手法だ。
そのほか、熱損失や摩擦損失を減らすなど、さすがに140年も研究してるから基本メニューはぜーんぶわかってる。そのなかで、「わかってるけどなかなか実現できない」のが、薄~い混合比で(ガソリンを)燃やすということ。
熱力学的には、これを「作動ガスの比熱比を上げる」と表現されるんだけど、要はシリンダーの中は、比熱比の高い空気やCO2の割合を高めるのがよろしいってことですね。
ところが、ご存じのとおりガソリンと空気の理論空燃比は1対14.7と決まっていて、これを外れるとすぐご機嫌ナナメになる。実用上は1対20くらいまで。それ以上空燃比を薄めると、もうプラグの周りだけしか火がつかなくなったり、途中で失火したりする。
SKYACTIV-Xは「圧縮着火」という発想で、この希薄燃焼問題をイッキに突破した新技術だ。その仕組みは簡単には説明しきれないけれど、要するにディーゼルみたいに圧縮比を上げてゆくと、どんなに薄い混合気でも自己着火するポイントがある。その原理を応用したものなんですね。
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