どうするマツダ!!? 正念場を迎える電動化戦略の活路と展望

■THSを載せることはある!? マツダは正念場をどう切り抜けるか

 ただ、とはいっても現在のマツダのグローバル戦略が逆風に晒されていることは否定できない。

 戦略に誤算が生じたのは、「マツダ3」と「スカイアクティブX」が、当初の目論見ほど成果を上げていないこと。マツダ3は初期の価格戦略に誤算があって重点市場の北米でダッシュし損なったし、スカイアクティブXも燃費性能と価格のバランスがいまひとつで、欧州以外では販売比率が低迷している。

 ただ、そんな販売開始初期のつまづきも、「CX-30」の追加や廉価版のバリエーション強化などで挽回しつつあるし、スカイアクティブXについても「スピリット1.1」へのバージョンアップなど明るい展望も見えてきた。

2020年10月に、「M HYBRID(エム ハイブリッド)」と呼ばれるマツダオリジナルのマイルドハイブリッドを搭載して登場した「MX-30」。2021年1月には、日本でもEVモデルが登場する予定だ
2020年10月に、「M HYBRID(エム ハイブリッド)」と呼ばれるマツダオリジナルのマイルドハイブリッドを搭載して登場した「MX-30」。2021年1月には、日本でもEVモデルが登場する予定だ

 また、注目される直6FRのラージプラットフォーム車種についても、エンジン単体の写真の公開するなど進捗ぶりに自信を深めている様子で、2022年といわれる市場投入に向けた開発が佳境に入っているものと思われる。

 そんななか、マツダにとって最も喫緊の課題は欧州市場におけるCO2排出量95g/km規制だが、これについては「欧州市場でトヨタがヤリスHVをマツダにOEM供給」というニュースが発表された。

 世界各地の市場ごとに電動化への要求は異なるが、2021年から本格的に95g/km規制のはじまる欧州は、優遇策の大きいEVの価値がもっとも高い地域。先に「EVが儲かるビジネスならとっくにやってる」と書いたが、ここだけはある程度採算を度外視してもEVを一定数売らなければいけないエリアといえる。

 それはマツダもわかっていて、初のピュアEVとして「MX-30」を投入したわけだが、残念ながらそれだけでは数が足りなかった。それを補完するため、燃費のいい「ヤリスHV」のOEMが必要になったというわけだ。

 こうなると、「では日本国内でもヤリスHVのマツダ版を売ったらどうか?」という発想が生まれるわけだが、これは実現する可能性が薄いと思う。

 燃費規制のルールが異なる日本では、燃費平均値の重要度が欧州ほどではなく、だったら無理にヤリスHVを売るより扱い慣れたマツダ2のディーゼルを販売してたほうがベター。かつてトヨタから技術供与を受けて「アクセラ・ハイブリッド」を造った時、マツダは痛い目に遭って懲りている。

トヨタの「THS-II」の技術供与を受けて開発された「アクセラ・ハイブリッド」だが、その販売台数は伸びなかった。他社の技術を組み込むことはかなり苦労したようだが、苦労と販売は比例しなかった
トヨタの「THS-II」の技術供与を受けて開発された「アクセラ・ハイブリッド」だが、その販売台数は伸びなかった。他社の技術を組み込むことはかなり苦労したようだが、苦労と販売は比例しなかった

 アクセラ・ハイブリッドですらユーザーをまったく引き付けられなかったのだから、トヨタ車を欲しいユーザーがわざわざマツダにトヨタ車を買いに来るはずがない。マツダは軽のOEMは続けているが、登録車は同じようにはいかないのが実情のようだ。

 それよりも、2020年11月の中期経営計画発表時に公表された、48Vハイブリッド車や、4気筒プラグインハイブリッドの投入、またMX-30へのロータリーレンジエクステンダー追加など、マツダ独自の技術に期待をかけるほうが現実的。

 それまでは、スカイアクティブXのバージョンアップや、クリーンディーゼルの改良、MX-30に投入された24Vマイルドハイブリッドなどで凌ぐしかないと思う。

 ラージプラットフォームやそこに搭載される次世代パワートレーンが市場に出るまであと2年ほど。それまで現有戦力で頑張るしかないが、いまこそがマツダの正念場と言えるかもしれません。

【画像ギャラリー】2021年にはついにEV投入! ニッチ市場を狙い撃つSUV「MX-30」の全貌

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