日本車と欧州車の『価格差』は縮小
価格の関係も変化している。かつてメルセデスベンツ300Eの価格はセンチュリーの1.2倍だったが今は逆に安い。V型12気筒5Lエンジンを搭載するセンチュリーが、2017年に生産を終えた時の価格は1253万8286円。
対して、現行E350eアバンギャルドスポーツは、充電可能なPHEVを搭載して811万円だ。一概に比べにくい面もあるが、機能から価格まで、さまざまな面から見てドイツ車と日本車の格差が縮まった。
今はまだドイツ車の神通力が通用しているから、これらの状況はメルセデスベンツのようなプレミアムブランドには有利に作用している。
ベンツAクラスやBクラスの価格は360万円前後だから、ヴォクシーハイブリッドZSあたりに近い。ちょっと頑張れば、かつて憧れの存在だったメルセデスベンツやBMWが手に入る。
また、近年では、日本の上級セダンの進歩が遅いこともドイツ車には有利な条件だ。かつてはターボといえば日本車で、今でもターボチャージャー本体の製造は日本企業が強いが、搭載する車種はドイツの小排気量ターボが主力。
しかもベンツE250アバンギャルドスポーツのJC08モード燃費は14.9km/L、レクサスGS300が13.2km/Lという具合だ。同じ2Lターボで性能も同等なのに、日本の燃費基準で、ドイツ車の方が優れた数値を達成している。
前述のように安全装備も中級から上級車種ではドイツ車が充実するから、価格がメルセデスベンツEクラスとレクサスGSが同程度となれば、ブランドの違いも影響して前者に魅力を感じるのは当然だ。
このような事情に基づいて、中級から上級のセダンでは、メルセデスベンツ、BMW、アウディがシェアを拡大させている。トヨタや日産は売れ行きを下げている。
日本車は中小型車で『強い』が高価格車市場で懸念も
ただしドイツ車にも不安な要素はあり、それはブランド力の低下だ。今はメルセデスベンツが強いから、A/Bクラスを有り難がってもらえるが、運転感覚や乗り心地は価格相応でVWに近い。A/Bクラスに力を入れすぎると、将来はブランド力を下げてしまう。アウディQ2もVWに限りなく近い。
今の状態が続くと、ドイツ車も日本車も、ブランド力は同等になってくる。機能や装備と価格のバランスに基づいて、商品力が公平に判断されるようになる。
今後も日本車が国内で売られるセダンの商品開発に力を入れなかったすれば、ミドルサイズからLサイズのセダン/ワゴン/SUVはドイツ車、軽自動車/コンパクトカー/ミニバン/ミドルサイズ以下のSUVは日本車、という売れ方になるだろう。高価格車の市場はドイツ車に奪われてしまう。
日本のメーカーにとっては危機的な状態だが、海外では珍しいことではない。輸入車比率が小型/普通乗用車市場に限定しても10%程度の日本は、海外自動車メーカーの組立工場が存在しないことも含めて、特殊な市場であるからだ。
今は電動化でクルマが変革期にあるといわれるが、「日本車vs輸入車」という身近な場面でも、同様のことが当てはまる。
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