20年前と力関係は激変!? 「欧州車は日本車より良い」は本当か

 日本車は欧州車に対して「追いつけ、追い越せ」と開発を続け、進化を遂げてきた。それでも「欧州車はやはり日本車より優れている」という“定説”を聞く機会が未だに多く、2017-2018の日本カーオブザイヤーもボルボが受賞した。欧州車は日本車より本当に良いのか? その力関係は、ここ20年ほどでガラリと変化していた!!

文:渡辺陽一郎/写真:編集部


「高いけど優れていた」ひと昔前のドイツ車

W124型メルセデスベンツ
最後の『ミディアムクラス』であり、初代EクラスでもあるW124型メルセデスベンツ(1985-1995)

 日本車と欧州車(主にドイツ車)の関係は、昔と今では大きく変わった。15年以上前を振り返ると、ドイツ車は日本車に比べて走行安定性が大幅に優れていた。当時の日本車は、高速道路を法定速度の100km/hで走っても、カーブを曲がっている最中に路面のウネリや段差を乗り越えると、挙動が乱されたり不安定になった。その点でドイツ車は、メルセデスベンツやBMWだけでなくVW(フォルクスワーゲン)でも安定していた。

 乗り心地も同様で、日本車は粗さを感じたり単純に柔らかかったりするが、ドイツ車は全長が3.7m程度の初代VWゴルフでも重厚感が伴った。

 シートも異なり、ドイツ車は長時間の運転でも疲れにくく、日本車は見劣りした。「腰痛のユーザーはシートの良さでドイツ車を選ぶ」という評判も聞かれた。

 ドイツ車がこれらの特徴を備えた理由は、高速走行の機会が日常的に多いからだ。走行安定性が悪かったり、正確な運転姿勢を取れなかったり、長時間運転で疲れやすいと、安定した高速走行が行えず事故の危険が増す。そこでドイツ車は、走行安定性、乗り心地、シートの座り心地に力を入れた。この特徴は、日本車との違いを含めて実に分かりやすく、ドイツ車人気に結び付いた。

 いっぽう、かつてのドイツ車は価格が高かった。1986年に販売されていたベンツ300Eは、直6、3Lエンジン搭載で765万円だ。この時に同じ排気量のトヨタ クラウン4ドアハードトップ3.0ロイヤルサルーンが353万2000円、V8、4LのトヨタセンチュリーEタイプでも650万2000円だったから、メルセデスベンツ300Eは相当な高価格車であった。

2000年代からドイツ車の優位性は徐々に下がる

2代目スイフト(2006-)。このモデルから世界戦略車となり、大幅な性能向上を果たした
2代目スイフト(2004-2010)。このモデルから世界戦略車となり、大幅な性能向上を果たした

 ところが2000年に入った頃から、ドイツ車と日本車の関係が変わってきた。まず日本車が海外でも積極的に売られるようになり、技術開発が進んで走行安定性が向上してきた。対するドイツ車は、進化が上限に近づいてあまり伸びない。

 また、高速時の直進安定性を重視するベンツ、適度に機敏な操舵感を大切にするBMWといったブランドごとの特徴も薄れた。走行性能が進歩すると、ブランドを問わずドライバーの操作に車両が正確に反応して、4輪の安定性を高める本来あるべき方向に進化するからだ。

 つまり、熟成が進むに連れて、日本車を含めて運転感覚がひとつの方向に集約され、ドイツ車と日本車の違いが薄れてきた。表現を変えると、ドイツ車の走りの優位性が相対的に下がってきた。

 安全装備もプリクラッシュセーフティシステムのように日本車が先行した時期もあったが今は互角だ。細かく見ればカテゴリーによって優劣が異なり、中級から上級車種はドイツ車が先進的で、軽自動車を含めた低価格車は日本車が充実している。

日本車と欧州車の『価格差』は縮小

2017年まで生産が続けられてきたトヨタのフラッグシップセダン、センチュリー。かつては日本車最高価格車でもあった
2017年まで生産が続けられてきたトヨタ センチュリー。かつては日本車最高価格車でもあった

 価格の関係も変化している。かつてメルセデスベンツ300Eの価格はセンチュリーの1.2倍だったが今は逆に安い。V型12気筒5Lエンジンを搭載するセンチュリーが、2017年に生産を終えた時の価格は1253万8286円。対して、現行E350eアバンギャルドスポーツは、充電可能なPHEVを搭載して811万円だ。一概に比べにくい面もあるが、機能から価格まで、さまざまな面から見てドイツ車と日本車の格差が縮まった。

 今はまだドイツ車の神通力が通用しているから、これらの状況はメルセデスベンツのようなプレミアムブランドには有利に作用している。ベンツAクラスやBクラスの価格は360万円前後だから、ヴォクシーハイブリッドZSあたりに近い。ちょっと頑張れば、かつて憧れの存在だったメルセデスベンツやBMWが手に入る。

 また、近年では、日本の上級セダンの進歩が遅いこともドイツ車には有利な条件だ。かつてはターボといえば日本車で、今でもターボチャージャー本体の製造は日本企業が強いが、搭載する車種はドイツの小排気量ターボが主力。

 しかもベンツE250アバンギャルドスポーツのJC08モード燃費は14.9km/L、レクサスGS300が13.2km/Lという具合だ。同じ2Lターボで性能も同等なのに、日本の燃費基準で、ドイツ車の方が優れた数値を達成している。前述のように安全装備も中級から上級車種ではドイツ車が充実するから、価格がメルセデスベンツEクラスとレクサスGSが同程度となれば、ブランドの違いも影響して前者に魅力を感じるのは当然だ。

 このような事情に基づいて、中級から上級のセダンでは、メルセデスベンツ、BMW、アウディがシェアを拡大させている。トヨタや日産は売れ行きを下げている。

日本車は中小型車で『強い』が高価格車市場で懸念も

BMW
かつてはスカイラインやマークIIなど、販売面でも日本車セダンの存在感は強かったが、ベンツ・BMWを筆頭とするドイツ車に対して劣勢に

 ただしドイツ車にも不安な要素はあり、それはブランド力の低下だ。今はメルセデスベンツが強いから、A/Bクラスを有り難がってもらえるが、運転感覚や乗り心地は価格相応でVWに近い。A/Bクラスに力を入れすぎると、将来はブランド力を下げてしまう。アウディQ2もVWに限りなく近い。

 今の状態が続くと、ドイツ車も日本車も、ブランド力は同等になってくる。機能や装備と価格のバランスに基づいて、商品力が公平に判断されるようになる。今後も日本車が国内で売られるセダンの商品開発に力を入れなかったすれば、ミドルサイズからLサイズのセダン/ワゴン/SUVはドイツ車、軽自動車/コンパクトカー/ミニバン/ミドルサイズ以下のSUVは日本車、という売れ方になるだろう。高価格車の市場はドイツ車に奪われてしまう。

 日本のメーカーにとっては危機的な状態だが、海外では珍しいことではない。輸入車比率が小型/普通乗用車市場に限定しても10%程度の日本は、海外自動車メーカーの組立工場が存在しないことも含めて、特殊な市場であるからだ。今は電動化でクルマが変革期にあるといわれるが、「日本車vs輸入車」という身近な場面でも、同様のことが当てはまる。

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