2020年10月26日に行なわれた所信表明演説で菅義偉首相は、「我が国は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と宣言を行った。政府が明確に政策目標を掲げたのである。
しかし気になるのは、目標を掲げるのはいいが、それを達成できる見込みがあるのか? という点だろう。
日本の主要な産業である自動車は、2050年にカーボンニュートラルを達成可能なのか? そのためにはどのような施策、ステップが必要になるのか? 自動車工業会の豊田章男会長が記者懇談会で語った、日本の現在地を踏まえつつ考察していきたい。
文/国沢光宏
写真/編集部、TOYOTA、Adobe Stock
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■政府が打ち出したカーボンニュートラルは日本の現状では厳しい
菅義偉首相は所信表明演説で「2050年に温室ガス排出量ゼロ」の方針を発表した。
それを受けて、2020年12月17日に自動車工業会の豊田章男会長は、全面的に協力する姿勢を示した上で「すべてのクルマを電気自動車にすると、火力発電主体の日本では二酸化炭素の排出量を減らせない」と記者懇談会で主張している。我が国のモビリティはどうなっていくのだろうか?
まず温室効果ガス排出量ゼロだけれど、今後30年の技術開発で「完全に二酸化炭素を出さないようにする」というのは不可能だと思う。プラスチックや潤滑油など生活必需品を作るため原油が必要だし、原油を精製する段階で航空機用の燃料など出てきてしまう。ガソリンだってエンジンで燃焼させるしか使い道がない。
そこでいわゆるカーボンニュートラルを実現しようとすれば、二酸化炭素を排出した分だけ吸収してやることが必要になってくる。
例えば植物による固定など好例。植物は太陽光により二酸化炭素を固定します。森林や農作物だけでなく、植物プランクトンも二酸化炭素を吸収してくれるのだった。バイオを使った吸収方法は多々ある。
火力発電所であれば、排気ガス中の温室効果ガスを除去する技術など考えられているようだ。池で「ミドリムシ」のようなプランクトンを育てて食糧や油分を取ることも可能だ。というくらい頑張らないと排出ガスをゼロにはできない。当然ながらクルマについちゃ、最終的には走行時の排出ガスを出さない電気自動車か燃料電池車となることだろう。
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