道路交通はたくさんのクルマ、オートバイ、そして自転車と歩行者が混在する状態であり、それをスムーズに行き交わせ、交通事故などを防いで安全性を高めるために信号機などの設備や道路交通法といった法律が制定されている。
それでも、実際の道路上では道交法では定められていないルールや運転者同士、自転車や歩行者とのジェスチャーや挨拶、アイコンタクトなどでコミュニケーションを取って交通を成立させているものだ。
高速道路や自動車専用道路であれば、原付バイクや自転車、歩行者もいないし、交差点や信号などもない(例外もあるが)分、流れが単純化されてスムーズになってくるが、それにしてもドライバー同士での意思の疎通、コミュニケーションが必要とされる状況はある。
こんな時にヘッドライトやハザードランプなどと同じように、合図として使われるのがクラクションだ。
対向車が進路を譲ってくれた時のお礼の気持ち、知人などとのクルマからの別れの挨拶、知人との待ち合わせで相手が自分のクルマに気付かない時など、クラクションを利用するのは便利な手段だ。だがクラクションも使い方を間違えると交通トラブルに発展する原因にもなる。
2020年6月末から施行されている「妨害運転罪」に該当する運転操作にもクラクションの不正な使用が挙げられている。執拗にクラクションを鳴らし、前走車のドライバーを威嚇すれば即、免許取り消しになってしまうのだ。
文/高根英幸
写真/Adobe Stock (Dmitriy@Adobe Stock)
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■クラクションの日常的な使われ方で迷惑な状況もある。
信号待ちで、青になったのに前方のドライバーが気付かず発進しない場合に、青信号を教えるためにクラクションを鳴らす場合がある。これは「ピッ」と短く慣らすだけならそれほど印象は悪くないし、教えられたドライバーも助かる。
だが、これが「ビーッ」と連続音になると、かなり攻撃的な印象となってしまう。特に日本車のクラクションの音色は、硬質で濁った高音に仕立てられているから、周囲の気を引き付ける反面、長く鳴らせば怒りの感情を表しているように聞こえ、反感を買うきっかけにもなりかねない。
さらにクラクションの迷惑な使い方をしているドライバーを見かけることもある。
深夜や明け方などに信号のない交差点、あるいは点滅信号となっている交差点を通過する際に、いちいちクラクションを鳴らしているドライバーもいる。筆者は深夜に仕事をしているので、こういうドライバーがいるとすぐに気付く。
住宅地の路地でこうした行為をするドライバーは、安全のことを考えているようでいて、実は自分のことしか考えていない。クラクションを鳴らせば、自分の存在を周囲の車両などに教えることができると思っているのかもしれないが、迷惑このうえない行為であるし、最悪の場合安眠を妨害されたとして損害賠償訴訟を起こされて賠償金を支払う羽目になるかもしれない行為だと認識するべきだろう。
法律上、認められるクラクションの鳴らせる状況というのは、道交法の第54条で定められている。それは「左右の見とおしのきかない交差点」、「見とおしのきかない上り坂の頂上で『警笛鳴らせ』の標識がある場所」、「山間部や曲がりくねった道路の『警笛鳴らせ』の標識がある区間内で、左右の見とおしのきかない交差点」、「見とおしのきかない曲がり角、上り坂の頂上」などを通過する時には鳴らさなければいけないのだ。
これらの状況は鳴らさなければならないので、本来は鳴らさないと道交法違反となるのだが、それが危険な状況を生む(事故の原因のひとつになるなど)ようなことでなければ、取り締まりを受けることはほとんどないようだ(以前は峠道などで「警笛鳴らせ」の標識の区間で、クラクションを鳴らさずに通過したドライバーやライダーが検挙された例もある)。
それと「危険を防止するためやむを得ない場合はこの限りではない」とされているので、危ないと思ったら急ブレーキと同時にクラクションを盛大に鳴らすことは法律上も認められている。
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