毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はスズキ パレット(2008-2013)をご紹介します。
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文/伊達軍曹、写真/SUZUKI
■2代目タントに対抗すべく開発された意欲作 パレット
2代目ダイハツ タントが作った「軽スーパーハイトワゴン」という人気ジャンルに参戦すべく、スズキが2008年に送り出した刺客。
走行性能等はさすがスズキということで好ましいものだったが、マーケティング面の失策で販売台数を伸ばすことができず、車名としては1代限りで消滅した軽自動車。
それが、スズキ パレットです。
スズキ パレットのボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1735mmのホイールベース2400mmという、2代目タントと十分渡り合えるもの。
床面全体を設計し直して低床設計とし、当時の軽自動車ではトップクラスの1365mmという室内高が確保されました。
そして助手席側にピラーレス・スライドドアを採用した2代目タントに対し、パレットは軽自動車としては初めて「両側スライドドア」を採用。
この両側スライドドアは、グレードによっては両ドアとも電動式となるものでした。
搭載エンジンは最高出力54psの直3自然吸気と、同60psの直3ターボ。トランスミッションはコラムシフトの4速AT仕様で、初期モデルのカタログ燃費は18.8~20km/Lです。
リアシートは50:50の分割可倒&リクライニング式で、リアシートは床下にスライド&格納式することで荷室とフラットなフロアを作り出すことが可能でした。
装備面では、スズキ車で初めてキーレスプッシュスタートシステムが採用されたほか、軽最多となる10スピーカーシステムも搭載しました。
また前席エアバッグや盗難防止装置の標準化など、安全&セキュリティ装備を充実させたこともパレットの特徴のひとつです。
2009年9月には一部改良を行い、新型CVTの採用とエンジンの改良を実施。新たに搭載されたCVTは、前進2段の変速機構と従来のベルト式CVTを組み合わせた副変速機構付きCVTでした。
そしてエンジンは、シリンダーヘッドやインテークマニホールドなどを変更したことで低速トルクが向上し、発進時の加速向上と低燃費化が実現しています。
またこのタイミングで、専用のややワイルド系な外観デザインとブラック基調の内装を採用した「パレットSW」を追加。
ファミリー層に加えて若年独身層もターゲットとしながら、スズキはパレットの拡販を目指しました。
しかしながらパレットはダイハツ タントの後塵を拝し続け、タントに続いて登場したホンダ N-BOXにも歯が立たない状況が続いてしまいました。
2010年8月にはマイナーチェンジを行い、その後も燃費を向上させたりアイドリングストップ機構を採用したりと頑張ったのですが、状況は好転せず。
そのためスズキは2013年2月に登場した後継モデルに「パレット」という名前は使用せず、「スペーシア」という名前を採用。そのためパレットという車名は、わずか1代で消滅することと相成りました。
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