強力タントの対抗馬!? 佳作スズキ パレットの誤算と人気車への礎【偉大な生産終了車】

■名称は1代限りも その系譜はスペーシアへ引き継がれる

 軽自動車初の両側スライドドアを採用するなどの力作ではあり、走りの良さもそれなりに評価されていたスズキ パレットの車名が1代限りで消滅してしまった理由。

 それは、冒頭でも申し上げましたが「商品戦略(マーケティング)のミス」だったのでしょう。

 明らかに2代目ダイハツ タントをライバルと目した作りに見えたスズキ パレットでしたが、スズキは「ライバルは、特定のユーザー層に焦点を当てたタントではない。パレットのテーマはむしろ『ワゴンRとの差別化』であり、幅広い層から便利に使ってもらうことを主眼としている」という意味のことを言っていました。

 そのためパレットは「室内の広さ」についてを超積極的には訴求せず、キャビンも微妙に絞り込むことで「車らしい安定感」を重視するフォルムにもしました。

 また宣伝においても、ダイハツ タントのような「子育て世代のママさん受け」は強調せず、もっと別の側面を強調しました。

 そういった志は立派だったのかもしれませんし、前述のとおり走りもなかなか秀逸ではありました。

 しかしそういったマーケティング戦略のせいで「走りとかよくわからない。とにかく便利で広い車が必要なんです」と考える世の中の大多数にパレットはまったく刺さらず、結果としてセールスは不振をきわめたのです。

 そのためスズキは開き直り、同じ「MK」という型式名を持つ、いわば2代目のパレットである初代スペーシアには「パレット」という車名は用いず、「広大なスペース」をイメージさせるスペーシアという車名を採用。

2013年3月から発売された「スペーシア」。室内長はクラストップの2215mm(パレットは2025mm)、燃費も29.0km/Lと低燃費を実現した。初代の形式はMK32S/42S型で、パレットの「MK21S」を引き継いでいる
2013年3月から発売された「スペーシア」。室内長はクラストップの2215mm(パレットは2025mm)、燃費も29.0km/Lと低燃費を実現した。初代の形式はMK32S/42S型で、パレットの「MK21S」を引き継いでいる

 そして宣伝戦略も意識的に「女性受け、ママさん受け」を狙う方向へと舵を切ったことで、初代スペーシアはまあまあのセールスを記録。

 そして2017年には、スーツケースをモチーフとした素敵なデザインの2代目スペーシアが誕生し、ホンダ N-BOXほどではないにしても、まずまずのセールスを続けています。

「パレット」というビジネスは失敗しましたが、そのエッセンスと型式名は、今日のスペーシアまで確実に受け継がれています。そのため、パレットを単なる失敗作とみなすのは間違いでしょう。

 パレットは、ターゲット想定や宣伝方法などの細かい部分の「調整」を間違えただけなのです。そして間違い(見込み違い)は、誰にだってたまにはやってしまうものです。

■スズキ パレット主要諸元
・全長×全幅×全高:3995mm×1475mm×1735mm
・ホイールベース:2400mm
・車重:910kg
・エンジン:直列3気筒DOHC、658cc
・最高出力:54ps/6500rpm
・最大トルク:6.4kgm/3500rpm
・燃費:20.0km/L(10・15モード)
・価格:136万5000円(2008年式 XS)

【画像ギャラリー】本文未掲載画像多数! 意欲作パレットの写真をギャラリーで見る(15枚)

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