■クラッシック・ミニが「王道は3ドア」の源流
まず、MINIというクルマをおさらいすると、元祖が誕生したのは1959年で、そこから41年間、一度もモデルチェンジすることなく、2ドアモデルだけを作り続けた。元祖MINIには4枚ドア車はなかったという事実が、「5ドアは邪道!」という意識の原点にある。
元祖MINIが狙ったのは、極限の経済性を持った4人乗り乗用車。そのために当時革新的だったエンジン横置きの前輪駆動とし、現在の軽よりはるかに小さいボディサイズで、大人4人がきちんと乗れるよう設計された。
さすがにいま後席に乗るとかなり窮屈に感じるが、体のサイズが平均的なら、頭や足がつっかえることは一応ない。
また、極限まで切り詰めた設計により、タイヤサイズはたったの10インチ。FFだから床下にドライブシャフトを貫通させる必要もないので、床は非常に低く、重心も低くなった。
サスペンションストロークも極限まで切り詰められ、結果的にほとんどロールしないゴーカートのような操縦性に。これがラリーでの大活躍へとつながった。
実際のところ元祖MINIは、前席に乗る限り痛快な乗り物だったが、リアサスペンションがほんのわずかしかストロークしないので、路面が悪いと、後席の乗員はすごい突き上げに襲われる。
MINIの誕生当時、イギリスの経済状況は最悪で、贅沢は言ってられなかった。いわば経済的困窮が、MINIという稀代の傑作を生んだのです。
■新生BMW MINIでも5ドア設定は現行モデルが初
そして2001年。MINIブランドを買収したBMWが後継モデルを発表する。
それは、MINIの愛らしいデザインをモチーフとしつつ、現代に求められる要件を満たそうとしていたが、「大人4人が乗れる居住性」という部分は切り捨てられていた。
元祖MINIのような、極限まで割り切ったリアサスを採用するのは無理だったし、BMWの気質からして走りに妥協はできず、大きなスペースを取るマルチリンクサスが採用されたためだ。
そのため、後席は元祖MINIよりむしろ窮屈なほどで、大人4人が長時間乗るなんて不可能。BMW MINIは、実用性第一ではなく、趣味性の強いクルマとしてリボーンされたので、それでよかったのである。
この弱点は、その後徐々に改善されたが、MINI独特のプロポーションを維持したまま、そこそこ広い後席を実現するのはやっぱり不可能だった。
そこでBMWは、まずすべてのサイズを拡大したクロスオーバーを登場させたが、現行の3世代目にいたって、ホイールベースを70ミリ伸ばした5ドアが投入された……という流れであります。
■3ドアの優位性は? 今もMINI 5ドアは邪道なのか
さて、ここでようやく最初の問いに戻りましょう。MINIにおいて、5ドアは邪道なのだろうか。
「5ドアのMINIは邪道!」と考えるMINI原理主義者が、5ドアを否定する最大の理由は、「5ドアのMINIなんてカッコ悪い!」である。
なかには、「ロングホイールベースの5ドアは、ゴーカートフィーリングが薄れているからダメ!」という人もいるかもしれないが、現行MINIは、かつてほどサスペンションを固めていないので、3ドアでも昔ほどゴーカートではない。やっぱり問題はカッコだろう。
確かに3ドアと5ドアを比べると、3ドアのほうが引き締まっていてカッコいい。ただ、ロングホイールベースの5ドアも、その胴長感がダックスフントみたいで、愛らしいのではないだろうか?
ちょっとしたバランスの悪さというのは、美点になったりする。元祖MINIのカントリーマンがまさにそれだ。BMW MINI第2世代の観音開きクラブマンもステキだった。現行クラブマンも悪くない。私はぜんぜん邪道とは思ってません。
個人的には、クロスオーバーだけは、だらしなく肥大化したように見え、どうにも耐えられない。MINIクロスオーバーだけは邪道だ! あれを買うならMINIじゃなくてもいいじゃないか! だってMINI最大の美点である小粋さが、ほとんどどこにも残ってないんだから!
結局、この問いはそれぞれの主観の問題。どういう答えを出してもいいんですね、当たり前ですが。
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