軽トラックが150万円に!? 電動化必須で軽トラックは窮地に追い込まれてしまうのか

 「2030年代半ばには(日本国内の)すべての新車をハイブリッド車(HV)か電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)にする方向で調整中」との報道から、2か月。世界的には「脱エンジン」の流れにある中で、日本ではハイブリッド車は守られる流れにあり、多少ほっとしたところではある。

 しかし、もし世界的の潮流に合わせて「脱エンジン」をしなければならなくなったとき、「すべての新車」という部分で最も厳しいのは、おそらく「軽トラ」だ。

 日本の物流を支えている小さな力持ち、軽トラ。軽トラのEVは登場するのだろうか。考えてみようと思う。

文/吉川賢一
写真/SUZUKI、DAIHATSU、HONDA、MITSUBISHI、TOYOTA

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■軽トラックは、実はめちゃくちゃ売れている!!

2021年6月に生産終了となるホンダ・アクティトラック。2WD STD(5MT)は83万6000円、4WD SDX(5MT)は100万7600円

 まず初めに、軽トラックは日本国内でどのくらい売れているのかまとめた。2020年と2019年の販売台数を下記に示したのでみてほしい。

 その結果は、軽トラカテゴリで1位のダイハツ・ハイゼットトラックは年間7.5~8万台(軽全体では7位)、カテゴリ2位のキャリイも5.5~6万台(同16位)と、販売台数としては、実はものすごく売れている。

スズキ・キャリイ 2WD(5MT)73万5900円~、4WD(5MT)88万7700円~ ただしエアコン、パワステ無し。当たり前装備ですら削ってコストダウンする割り切り様は素晴らしい

 ちなみに軽全体で7位というのは、日産ルークス(10位)、ホンダN-WGN(11位)、ワゴンR(12位)よりも上。しかも、2019年の年間約18.2万台に対し、コロナ禍直撃の2020年は17.5万台と、大きく減少もしていない。軽トラを製造するスズキ、ダイハツにとっては、重要なカテゴリだ。

 用途に合わせて機能や性能が最適化されている軽トラは、農業や水産業を営む上で、これほど合致したクルマはない。筆者の実家にも数年前まで軽トラがあった。畑仕事に行くときの足として、収穫した野菜を運ぶ貨物としても大活躍していた(重ステの4速MT車だったが、ドライバー高齢化のため手放した)。

■軽トラEVはすでに登場し、そして消えていた

ダイハツ・ハイゼットトラック。10年連続で国内軽・小型・普通トラック販売台数(2010年~2019年)で日本一を誇るチャンピオンだ

 実は最近まで、軽トラックのEVとして、三菱から「ミニキャブMiEVトラック」が販売されており(2012年12月~2017年5月)、軽トラEVを知るには、このクルマがベンチマークとなる。

 ミニキャブMiEVトラックは、i-MiEVの技術を活用したピュアEVであり、搭載するバッテリー容量は10.5kWh、約100kmの走行が可能であった。

 モーター出力は41ps/20kgf・m、ガソリンエンジン(50ps/6.4kgf・m)よりも倍以上もトルクがあり、軽トラの積載上限である350kgを積み込んでも、なんら問題はないだろう。軽トラの使われ方を考えれば、長距離を走れる性能は必要なく、約100km程度の走行距離があれば十分だ。

 また、排ガスが出ないため、農作物や海産物といった商品へのダメージもない。市場を動き回るターレーほどには小回りは効かないが、そのまま公道も走れる軽トラEVの機動力は重宝されるだろう。給油の手間も不要で、自宅用充電器を備えれば、電気料金の安い夜間充電もこなせる。

 軽トラックを普段使いされる方は、戸建てを所有する方が多いはずだ。価格さえ安ければ、軽トラEVは悪くないどころか、軽トラの用途にマッチしている。価格さえ安ければ。

■軽トラは「価格がすべて」

三菱ミニキャブMiEVトラック。軽トラックとしてはかなりの高額となった

 ミニキャブMiEVトラックのデビュー時の価格は、税抜176万9524円と、2WDの軽トラックにしては超高額。

 ちなみに、途中で税抜153万3000円(マイナス24万円)への価格改定があったものの、ダイハツのハイゼットトラック(2WD 4AT)は税抜86万円、スズキキャリイ(2WD 3AT)が税抜85万8000円であった。

 ガソリンの軽トラと比べて約2倍もある価格差は、どうにも受け入れられることはなかったようで、販売台数が伸びずに、2017年5月に生産終了となっている。

 軽トラは、小売りを生業にしているユーザーにとっては、必要不可欠のモビリティだ。そして、とても消耗が激しいクルマだ。荷物や農機具をそのまま乗せることができる反面、剥き出しの荷台は傷だらけになり、結果、錆も発生しやすい。

 また、畑や山を登るため、足回りも痛みやすく、また積載量が増えるとタイヤの摩耗も激しい。筆者の実家にあった軽トラも、常に泥だらけで錆びだらけだった。そのため、買い替えサイクルもわりと早かった。

 買い替えサイクルの早い軽トラの車両価格の高さは、ユーザーの利益を圧迫してしまう。軽トラは、わずかでもコストを下げるため、この令和の時代に、エアコンレスやパワステレスの仕様が、新車で売られているクルマだ。

 近年は、安全装置の類(ABS、エアバッグ)の装着が義務化されているために、必然的に車両価格は上昇傾向にあり、ユーザーにとっては厳しい状況となっている。

 安いガソリン仕様が売られているのに、あえて2倍も高い軽トラEVを選ぶのは、よほど環境コンシャスな方か、農協のような組織がまとめて購入するような場合でなければ、ありえない。

■クルマの使われ方を加味するべき

トヨタ ピクシストラックはダイハツ ハイゼットトラックのOEMだ

 軽トラは、昔は大手の自動車メーカーも自社でつくっていたが、第一次産業従事者の減少もあり、現在はほぼOEM化されてしまい、いま軽トラをつくっているのはスズキとダイハツのみだ。

 もし、軽トラのEV化を推進するのであれば、たっぷりとした補助金と、税金免除などの手厚いバックアップがなければ、軽トラユーザーにいる、第一次産業従事者を守ることはできない。

 これは、ハイブリッド車でも同じことだ。バッテリーがない分、ハイブリッド車はピュアEVよりは多少安くはなるものの、ガソリン車と比べれば断然高いことには変わりない。

 自動車メーカー側も、燃費改良(排ガス低減)の努力は続けないとならない。未だにJC08モードで燃費を表示しているようでは、環境先進国として、諸外国へメンツが立たない。より効率を追求した、軽トラック向けの次世代環境対応エンジンが作れるはずだ。

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