■セキュリティと盗難の技術は結局いたちごっこ
前述したようにクルマのセキュリティや電子制御は年々高度化しているが、それを追いかけるようにクルマを盗み出す技術も高度化している。
スマートキーから発せられる電波をアンテナで中継させて、スマートキーの持ち主が隣に立っているとクルマに誤認識させて、ドアロックを解除してエンジンもスタートさせてしまうリレーアタックは、TVの情報番組などでも紹介されたので、知っている人は多いだろう。
イモビカッターと呼ばれるイモビライザーを無効化する装置や、クルマから発信される微弱な電波を利用して元のキーがなくてもキーを複製できる、キープログラマーと呼ばれるデバイスを使ってスマートキーを複製してしまうことにより、高級車はむしろ以前よりカンタンにクルマを盗み出すことが可能になってきている。
こうしたスマートキーに関する技術はもちろん公開されていないが、海外ではハッカーがシステムを解析して、独自のキー複製デバイスを開発して裏ルートで販売することにより収益を上げている。そんな製品が日本にも入っているようだ。それでも日本では、部品としてブランク(まっさらな状態)のスマートキーを手に入れることは難しいから、ここで防犯性が確保されていると思われがちだ。
だが海外から手に入れたり、ネットオークションで中古のスマートキーを購入して初期化(初期化済みも多い)して利用するなど、抜け道はいくらでもある。性善説に基づいた製品開発には、どこかに甘さがある。所詮は人が作った防犯システムは、人によって破られるのだ。
スマートキーの複製が短時間でできるようになってきたため、今後はショッピングモールの駐車場など比較的長時間の駐車中に狙われて、クルマを盗まれるケースも増えるかもしれない。人目の多い場所に止めるようにするなどの、防犯意識を高めることが重要だろう。
犯罪が起きにくい場所を選び、犯罪をしにくい環境を作る。これがリスク・マネジメント。そして犯罪が起こってしまったら、万全のフォローが受けられるように備える。これはクライシス・マネジメントと呼ばれている。こうした危機管理能力を高めていくことが、クルマを守ることにもつながるのである。
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