■コネクテッドカーの “実はヤバイ”
ネットを介した通信には必ず「ハッキング」という危険が伴う。だからこそテスラを除く自動車メーカーの多くは「OBDから内部に外部からの情報が入り込むことは絶対拒否する」。
ちなみに「OBDから内部」へ入ると、車載制御の書き換えも可能。コンピューターのアップロードのようなもの。テスラなど夜のウチに自動的にアップロードされ、新しい機能が加わっていたりする。面白いと思えば面白い。
ただ悪意のあるハッキングが行われたら恐ろしい。今や電子スロットルだし、ハンドルもモーター稼働。ブレーキだって電気信号で自由自在だ。
例えばアダプティブクルーズコントロールをセットした途端、アクセル全開になり左にハンドル切れるようなマルウェア(悪意あるソフト)を組み込まれたらどうよ! ということで今後もクルマ本体と隔離された通信機能のみのコネクテッドしかできないと思う。車々間制御も危険。
(国沢光宏)
※OBD…On-board diagnostics エンジンコントロールユニットに取り付けられている自己診断機能。
■世界が進めるEV化の “実はヤバイ”
EVはいま完全にバブル状態。そりゃ超長期的に見ればモビリティの動力源が電動化されるのは必然だけど、そのためには解決しなければいけないハードルが山ほどある。
推進派は熱に浮かれて都合の悪い部分をワザと無視しているんじゃないか、そう疑いたくなるほど問題点はイッパイある。
まず第一の論点は技術面における問題だが、これにはメディアやネットでもよく論争が戦わされているからご存じの方も多いと思う。
電池を中心としたEVの耐久信頼性、充電時間や充電インフラ、中古車価格の下落、そしてそもそも電気をどうやって造るのかというCO2排出量の問題…。
現在もっとも販売台数の多いEVでも累計50万台レベルなので、こういう課題が克服されているのかどうか、検証にはまだまだ時間がかかる。
ただ、ぼく個人としてもっと気になるのは「ほんとうにEVってそんなにボンボン売れるの?」という根源的な問題だ。
いま、○○年後に年間ウン百万台というふうにEVのバラ色の未来が語られているが、規制によってユーザーを無理やりEVに誘導している中国ですら、そんなに容易に達成できる数字とは思えない。
収益を生み出せない事業をいつまでも継続することはできない。EVがほんとうにたくさん売れて自動車メーカーが利益を上げることができるのか? これこそが、EV最大の問題点なんじゃないかと思います。
(鈴木直也)
■理想的な乗り物FCVの “実はヤバイ”
EVブームのあおりで「FCVはオワコン」なんていう声も出ている。FCVは水素というありふれた元素をもとに電気を起こし、排出されるのは水だけ。原理としてはこんなにエレガントでクリーンな動力源はない。
しかし、その水素の扱いこそがいちばんの難問。元素の中でもっとも軽い水素は、エネルギー密度が低いから液化か圧縮が不可避。
さすがに液化水素は扱いが難しすぎるから、最近のFCVは70MPaまで圧縮した高圧水素タンクを使っている。
液化水素ほどではないにしろ、この高圧水素タンクの扱いがきわめてデリケート。絶対漏れちゃいけない、衝突しても壊れちゃいけない、居住性を損なっちゃいけないと、えらく高コストなパーツになっている(アルミ容器にカーボンファイバーテープを巻いて強化する構造)。
FCVの課題は突き詰めて言えばコストの問題。初期にはそれがFCスタックだったが、スタックが安く造れるようになると今度は水素タンク、そしてその次はインフラとしての水素ステーション…。実用化の道のりには、コストダウンの高いハードルがつぎつぎ待ち構えている。
シンプルでエレガントな技術ほど、実用化が難しいという見本かも。
(鈴木直也)
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