2015年に「NV200タクシー」が日本国内で発売となったが、すでにオーダーを受けている分の生産のみとなっていて、2021年3月中には正式に生産終了となる見込みだという。
JPNタクシーよりも先にデビューした「NV200タクシー」は、ユニバーサルデザインタクシーであり、ミニバンをベースにしているため大きな荷物も載せやすく、車いす利用者も使いやすいように設計したとして、日産も大きくアピールしていた。
しかし、それがわずか6年で生産終了となったのには、相応の理由があるのではないだろうか。JPNタクシーに単純に勝てなかったのか? それとも日産の抱える事情によるものなのか?
タクシーに参入するのはそれなりの覚悟あったはずだが、なぜ短命で終わったのか? そのワケと、日産の商用車戦略はどうなるのか考察していきたい。
文/渡辺陽一郎
写真/NISSAN、編集部
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■トヨタのJPNタクシー発売で流れが変わった
日産の商用車、『NV200』をベースに開発されたタクシー仕様の『NV200タクシー』(発売時点の車名はNV200バネットタクシー)が2020年3月には生産を終える。
NV200バネットは、前輪駆動ベースの商用車として、2009年に発売された。3代目の『マーチ』や『ティーダ』と共通のBプラットフォームを使い、前輪駆動によるミニバン感覚の商用車としてアピールされた。
この後、2010年10月に5ナンバー車のワゴンを加え、同年12月にはタクシー仕様も設定している。2014年にはタクシー仕様の改良モデルを発表した。NV200の商用バンとワゴンは今後も生産を続けるが、タクシー仕様は終了することになった。
最初の発売から10年を経過したとはいえ、なぜタクシー仕様だけが生産を終えるのか。メーカーに尋ねると「ラインナップを最適化する観点から生産を終了することになった」と返答された。次は販売店に尋ねると、以下のようにコメントされた。
「生産を終えた背景には、いろいろな理由がある。最も大きな理由は売れ行きの伸び悩みだ。NV200タクシーが発売された時は、車椅子ごと乗車できるタクシーは、この車種のみだった。その意味でNV200タクシーには、ほかの車種では得られない特徴があったが、トヨタから(2017年に)JPNタクシーが発売されると状況が変わった」
「当初のJPNタクシーは、車椅子の乗降性が悪かったものの、乗車は可能にしていた。しかもタクシー専用車だから、外観もNV200タクシーに比べて立派に見える。最近はクラウンコンフォートなどトヨタのタクシーがJPNタクシーへ切り替えたこともあり、販売面で大きな差を付けられた。NV200タクシーは売れ行きが下がり、なおかつ新しい法規に対応する必要も生じたから、生産を終了する」
そうなると今後の日産は、タクシー仕様車には、もはや力を入れないのか。
「NV200タクシーは、発売から10年を経過したこともあって生産を終えるが、最近の日産はセレナのタクシー仕様に力を入れている。セレナは人気の高いミニバンだから、エンジンノイズが静かで乗り心地もよく、ドライバーや乗客の皆さんから聞かれる評判も優れている。このほかノートのタクシー仕様も用意する。今後はこのような乗用車ベースのタクシー仕様が主力になる」
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