トヨタRAV4をベースに、シボレー顔に仕立てたアメリカン風SUV、光岡バディ。その反響はすさまじく、2021年に50台、2022年に150台という予定だったバディの生産台数は、たった2日で売り切ってしまった。
そこで2022年以降から2倍となる年間300台の増産を決定した。しかし相変わらずの納期約2年待ちは変わっていないという。
ベストカーwebでも、1月14日の記事は400万PVというケタはずれのアクセスを達成している。一般ユーザーの関心も非常に高いのである。
なぜここまで光岡バディは大ヒットしたのか? 売れた秘密はどこにあるのか、モータージャーナリストの清水草一氏が解説する。
文/清水草一、写真/ベストカーweb編集部、光岡自動車
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■バディがこれほどウケたのは理由があった!
光岡バディは、なぜここまで人気なのか? 信頼性のカタマリであり、人気もあるトヨタRAV4をベースにしたことや、本物のアメリカンSUVに乗りたかったけれど、大排気量で燃費が悪くて故障も怖いと踏み切れなかった潜在層が、バディに飛びついた……という形だろうか。
RAV4の信頼性が高く安心なのは間違いない。しかし、人気のハイブリッドグレードにオプションもそれなりに盛れば、バディの支払総額は700万円に達する。それがこれほどの人気となるとは……。
やはりバディはデザインで売るクルマだ。今回は、デザイン面に絞って、光岡バディを語ってみよう。
光岡バディのフロントマスクは、ほぼ「シボレー サバーバン」のソレだ。1971~1991年の7代目もしくは1992年から1999年まで生産された8代目サバーバンに最も近い。同時期のK5ブレイザーにも似ている。
といっても、ピンポイントで「8代目サバーバン最高!」と思っている日本人はごく少ないだろう。バディのフロントマスクは、ピックアップトラック系アメリカンSUVの最大公約数であり、漠然と「おおらかでカッコいい!」「こんなクルマが欲しかった!」と思わせる。
それは、ファミリーレストラン『デニーズ』の店舗外観に近い感覚である。
日本でのアメ車人気は意外なほど根強い。日本人の深層心理には、バカデカくて大味で、ただひたすらおおらかなアメ車デザインへの憧れとも郷愁ともつかない何かがある。
かく言う私も、アメリカンSUVが欲しいと思ったことはコレッポッチもないが、サバーバンを見ると、「ああ、いいなぁ」、「ああいうおおらかなクルマって癒されるなぁ」とは感じる。
それは一種のないものねだり。日本で乗るのはムリだけど、アメリカっていいなぁ、という感覚だ。多くのクルマ好きが、同じような思いを抱いているのではないだろうか。
その証拠と言ってはなんだが、本物のアメリカンSUVは、日本ではあまり売れない。いや、売れなかった。売れなかったがゆえに、今や正規輸入モデルは非常に限定されている。
現在、シボレーブランドのラインナップは、コルベットとカマロだけ。サバーバンはただの一度も正規輸入されていない。GM車全体を見ても、キャデラックにしかSUVがない。
フォードは日本販売から撤退し、人気のあったエクスプローラーも、現在は並行輸入に頼るしかない。ジープは非常に元気だが、ジープはジープであって、アメリカンピックアップ系SUVとはデザインテイストがまったく異なる。
また、アメリカンSUVの現行ラインナップ(日本にはほぼ正規輸入されていない)を見ると、多くのモデルでデザインの洗練度が大幅に上昇している。かつてのようなおおらかで大味なデザインは、完全にノスタルジーなのである。
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