■電動化を乗り切れるか? これからのOEM車の動向
しかしすべてが穴埋めとは限らない。日産とトヨタは、以前は軽自動車を扱っていなかった。日産では「日産車ユーザーの22%が、セカンドカーとして軽自動車を併用している」というデータに基づき、2002年にスズキ『MRワゴン』のOEM車を日産『モコ』として販売するようになった。
この流れを受けて、日産は2011年に三菱と合弁会社のNMKVを立ち上げ、今では軽自動車の日産『デイズ』と『ルークス』、三菱『eKシリーズ』を共同で開発/製造している。それでも大量に売るのが難しく、儲けの少ない軽商用車は、依然としてスズキから供給を受ける。前述のとおり今は三菱の『ミニキャブバン/トラック』も、スズキ製のOEM車になった。
今後の動向としては、OEMはさらに複雑になって活発化する。二酸化炭素の排出抑制を目的にした燃費規制も実施され、ハイブリッドやプラグインを含めた電動化も進む。安全装備、自動運転や運転支援機能も含めて開発費用が高まり、コスト低減のために、メーカーの垣根を超えた共通化が進む。
ロッキーとライズのような完成車のOEM関係に留まらず、リチウムイオン電池や電動プラットフォームなどの共通化も進む。OEMを含めた多種多様の提携をいかに賢く進めるかが、今後の明暗を分ける。
従来から行われてきたOEMのメリットとデメリットは、ユーザーから見た時の判断が難しい。新規車種のダイハツ『ロッキー』を『ライズ』としてトヨタの販売店も扱えば、多くのユーザーが購入可能になるからメリットを生み出す。
その半面、スバルが製造していた『サンバー』がダイハツ『ハイゼット』のOEM車に変更されると、車種数は維持されてもユーザーの選択肢は狭まってしまう。既存の車種を廃止してOEM車に切り替えるのは、主にメーカーの都合に基づく穴埋めで、ユーザーのメリットにはならない。
かつて1989年に発売されたマツダ『オートザムキャロル』では、エンジンやプラットフォームについてはスズキから供給を受けながら、ボディと内装はマツダが独自にデザインしていた。このようにOEMや共通化で合理的な開発と製造を行いながら、いかに個性的で優れた商品を生み出せるのか、今後はその使い分けがますます大切になる。
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