走行距離も含めて過酷に使われる商用車:ハイエースなど
商用車は1年間に数万kmを走る場合もあり、乗用車に比べて走行距離が長くなりやすい。重い荷物を運ぶことも多く、エンジン、プラットフォーム、サスペンションまで、さまざまな機能で耐久性が重視される。
プロボックスのようにハイブリッドを搭載する商用車もあるが、ワンボックスバンのハイエースなどは使われ方も過酷だから、電動機能の信頼性も高めねばならない。
そして商用車の価格は、耐久性を高めたこともあって全般的に高額だ。例えばハイエースでは、直列4気筒2Lガソリンエンジンを搭載するベーシックな5ドアバン「DX」の3/6人乗りでも、価格は248万5000円(6速AT)になる。
5ドアバン「スーパーGL」になると、成形天井など内外装の質を高め、リアクーラーも標準装着されるから、2Lガソリンエンジン搭載車でも価格は306万1000円だ。この「スーパーGL」に、両側スライドドアの電動機能、スマートエントリー&スタート、LEDヘッドランプなどをオプション装着すると330万円に達する。
この「スーパーGL」をハイブリッド化すれば、価格がさらに40万円は高まるから370万円だ。4WDなら400万円になる。アルファード「ハイブリッドX」(8人乗り)は、4WDを併用して454万7000円だから、ハイエース「スーパーGL」にハイブリッドを加えたら、これに近い価格になってしまう。
また、ハイエースは後輪駆動の商用車で、荷室を平らに仕上げた。前輪駆動ミニバンのアルファード、後輪駆動でもセダンになるクラウンハイブリッドなどとは、車内の作りが大きく異なる。
ハイブリッド化するには、リチウムイオン電池などの搭載位置にも工夫が必要だ。独自性が強いため、価格が高くても大量に販売できる見通しがないと、ハイエースにハイブリッドを設定するのは難しい。
その点でモーター機能付き発電機を搭載して、減速時の発電/アイドリングストップ後の再始動/エンジン駆動の支援を行うマイルドハイブリッドであれば、7~10万円の価格上昇で成立する。
メカニズムもコンパクトで搭載しやすい。その替わり燃費向上率も3~5%と小さく、マイルドハイブリッドでは搭載するメリットも弱まる。
軽トラックや軽ワンボックスバン/エブリイやハイゼットなど
価格を安く抑えることが求められる軽自動車には、今のところ本格的なストロングハイブリッドは用意されない。
それでも前述のマイルドハイブリッドは、スズキや日産が幅広い車種に搭載するが、軽自動車のトラックやワンボックスバンでは難しい。前述のとおり燃費向上率が小さく、価格も7~10万円は高まるからだ。
しかも軽商用車は、エンジンの排気量や動力性能の割に重い荷物を運ぶ。従ってN-VANなど一部の車種を除くと、軽商用車に軽乗用車のようなCVT(無段変速AT)は採用されない。5速MTと4速ATが中心だ。
そうなると燃費の向上が難しい。乗用車のタントでは、ノーマルエンジンを搭載する2WDのWLTCモード燃費は21.2km/L、JC08モード燃費は27.2km/Lだが、ハイゼットカーゴは大幅に下がる。ノーマルエンジンの2WDは、4速ATの場合、WLTCモード燃費が14.1km/L、JC08モード燃費でも17.8km/Lになる。
エブリイもノーマルエンジンで2WDの4速ATは、JC08モード燃費が17km/Lだ。軽商用バンの燃費数値は、全高が1700mmを超える軽自動車乗車と比べても、65%前後に留まって燃費を向上させにくい。
1組のクラッチを使った有段ATの5速AGS仕様のJC08モード燃費は19.4km/Lに向上するが、それでも20km/Lには達しない。
このように軽商用車は、仮にハイブリッドを搭載しても、燃費を向上させるのが難しい。そうなると乗用車と同様の燃費規制を課せば、軽商用車の成立が困難になってしまう。
その一方で軽商用車は、日本の物流を支える大切な存在で、社会インフラでもある。軽商用車はボディとエンジン排気量が小さいため、小型/普通商用車に比べると本質的に環境負荷が抑えられる。地域内の配達などが中心で、走る距離も短いから、燃費規制にも別枠を設けるべきだ。
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