トヨタがMIRAIの燃料電池技術を使ったFCシステムをひとつのコンパクトなパッケージにしたFCモジュールを開発したことを2月下旬に発表した。
トラックやバス、鉄道、船舶、発電機などへの展開を想定しているそうなのだが、このFCモジュールとは具体的にはどういったものなのか? そして将来、どのように使われて、どのようなことを実現することができるか?
FCモジュールを活用したトヨタが考える未来について、自動車評論家の国沢光宏氏に解説してもらった
文/国沢光宏 写真/TOYOTA
■2050年のカーボンフリー化を実現するためのトヨタの提案
困ったことに2050年のカーボンフリーが努力目標じゃなく「必達目標」という ことは、あまり認識されていないようだ。具体的に説明すると、少なくともヨーロッパの場合、二酸化炭素を排出する工場で生産した製品は販売できなくなる。もちろんクルマも含まれるため、日本の工場をカーボンフリー化しなければ輸出だって不可能。
アメリカもGAFAに代表される大手優良企業が出入り企業にカーボンフリー化を要求してくるだろう。日本側で対応できなければ、江戸時代のような鎖国状態になってしまう。
GAFAの荷物を運ぶトラックなどもディーゼルエンジンを搭載していたらダメ。はたまた工場を建設する時の建設機械だってカーボンフリーが求められる。
そんな状況を見たトヨタは、カーボンフリーである燃料電池のパワーユニット 『FCモジュール』を提案してきた。例えば建設機械を燃料電池で動かすケースなど考えて頂きたい。
現状だと、燃料電池本体の置き場所や、安全性を確保しなくちゃならない配管など、けっこう苦労するだろう。トヨタから部品を購入しても使い切れないワケ。
■トヨタが発表した次世代パワーユニットの中身
さてFCモジュールである。写真を見ていただけるとわかるように、縦型と横型の2タイプ。 内部に燃料電池本体やインバーター、水素やエアポンプなど組み込み済み。外部から水素と空気を送り込み、冷却水パイプを繋いでやれば発電できるというもの。
カーボンフリー発電機だと思えばOK。出力は82馬力と109馬力の2種類が用意されるようだ。
重量&大きさは、100馬力級のディーゼルエンジンと同じくらい。船舶用だと 105馬力のヤンマーの「4JH3-DT」で289kg。ディーゼルエンジン搭載しているスペースに109馬力のFCモジュールを置き、取り出した電力でモーター(スクリュー)を駆動させるということ。今や大型客船の大半がモーター駆動になって ます。
真面目な話、小型漁船やプレジャーボートのパワーユニットをどうしたらいいか、今や大きな課題といってよい。搭載した電池の電力だけで走るのは無理。軽油100L分のエネルギーを貯めようとすれば、リチウムイオン電池だと船体重量の半分以上に相当する1500kgくらいになってしまう。100馬力級のフネ、エンジン込みで2000kgくらいです。
港にクルマと両方対応できる水素ステーションを作っておけば燃料補給は問題なし。
最悪の水素切れは、トウモロコシなどから作るバイオメタノール燃料(カーボンフリーという分類になる)で稼働させる非常用発電機を搭載しておけばいいだろう。モーターでスクリューを回すシステムであれば、燃料電池でも発電機でもフネは動く。
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