■NISMOのテクノロジーが詰め込まれた空力性能
パトロールNISMOのエアロダイナミクスは、モータースポーツで活躍するNISMOのテクノロジーをベースに、基準車であるパトロールから改良が施されている。この手の大型SUVの場合、フロアの下に流れ込む空気の影響で、ボディにはリフト(揚力)が働きやすく、高速域になるにつれて、フロントタイヤの接地感が抜けてしまう現象が起きてしまう。そのため、揚力を減らして、ボディを接地させる方向へのセッティングが重要となる。
パトロールNISMOでは、フロントバンパーにサイドダクトを追加し、バンパー下には、レッドに塗装されたリップスポイラーを追加することで、フロントから受けた空気が、ボディ下部へ流れる量を減らし、フロントのリフトを抑えている。
また、リアに大型のルーフスポイラーを装備し、ルーフ面を流れてきた気流が、ボディから剥離して発生する渦の位置を遠ざけることで、ドラッグ(抵抗)を低減。大型リアバンパーの下部には、縦フィンが設けられたディフューザーが装備されており、整流効果を持たせている。
さらには、NISMO専用デザインとなる2トーンカラーの22インチホイールや、このモデル用に仕上げたビルシュタイン製ショックアブソーバーを採用するなど、足回りのセッティングもぬかりなく施されている。こうしたパーツの効果もあり、パトロールNISMOは優れた高速直進安定性と、アジリティ(俊敏さ)を手に入れているそうだ。
■NISMOらしさ溢れるスポーティなエクステリア&インテリア
エクステリアには、立体的なハニカムメッシュグリル、NISMOエンブレム、水平クロームラインなどに加えて、NISMOの象徴である「レッドライン」が外周に施されていることで、いかにも「NISMO」といった、スポーティなデザインとなっている。リアバンパーには、LEDのリアフォグライトも装備している。
インテリアも、レースモデルを思い起こさせるような、赤を基調としたスポーティなデザインが随所に施されている。シートは、サイド部にはレザーを、本体部にはアルカンターラ生地を採用、ヘッドレストにはNISMOのロゴも入る。これらは、前席だけでなく、後席にまで施されている。
ドアやダッシュボードの内張りやシート、ステアリングホイールには赤い刺繍のステッチが入れられており、部分的には、赤いファイバーを編み込んだカーボンパネルも採用。ステアリングホイールには、レーシングカーさながらのアルカンターラ素材も用いられている。NISMOならではのコーディネイトがバッチリと決まっており、「NISMO車を手に入れた」という満足度は高いだろう。
ベースとなるパトロールは19万9900~32万9000 AED、日本円に換算するとおよそ603万円~991万円だ。パトロールNISMOは38万5000 AED、日本円では約1160万円と、最上級モデルらしく超高額。しかし、中東の富裕層にとっては、このくらいの価格はなんてことはないだろう。
■ブランド強化の戦略車としてはもってこい!!
日本では、できれば運転したくない程の巨大SUVだが、UAE をはじめ、中東・アフリカ地域では、車高が高いSUVタイプの大型なクルマが大変好まれている。なかでも、日本車は人気が非常に高く、日産『パトロール』のほか、トヨタ『ランドクルーザー』、レクサス『LX570』といったモデルがよく売れており、日産にとって、中東地域は重要な市場のひとつだ。
こうしたクルマを買う富裕層は、荷物を載せて移動するといった実用としてはもちろんのこと、なんと、砂漠地帯を走り回る、という遊びにも、このような巨大SUVを使うらしい。砂丘の山をどこまで登ることができるかを競走したり、小高い砂丘を使ってクルマでジャンプをしたり、という、とても日本では考えられないような遊びを、この巨大SUVでするというのだ(筆者の知人は現地で実際に目撃したらしい)。
中東は、トヨタ、ホンダ、メルセデス、BMWはもちろん、ポルシェやフェラーリ、ランボルギーニに至るまで、あらゆる自動車メーカーが勝負している市場であり、高級ラグジュアリー大型SUVのほかにも、『GT-R NISMO』のようなスペシャリティカーも人気で、現地にはファンもたくさんいる。
耐久性が高く、信頼のおけるジャパニーズブランドの「NISSAN」、そのスポーツカーブランドである「NISMO」。中東の顧客のためだけに仕上げた、スペシャルモデルであるパトロールNISMOは、中東地域におけるブランド強化の戦略車として、非常に重要なモデルだということは、間違いない。
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