自動運転実験中の事故 責任の所在はドライバーかクルマか?【クルマの達人になる】

自動運転実験中の事故 責任の所在はドライバーかクルマか?【クルマの達人になる】

ウーバーの自動運転実験車が交通事故を起こした。しかも今回は死亡事故という現状としては最悪の事態になってしまった。車載映像を見る限りドライバーは下を向いており、異変に気付いた時にはすでに時は遅し。夜間で見通しも悪く、被害者が道路を横断していたことへの過失もあるのだが、いったいだれが責任を負うべきなのか? 自動運転時代に向かうべく時に起きた不幸な事故。今後の自動運転への考え方を一度整理したい。

文:国沢光宏/写真:池之平昌信、ベストカー編集部
ベストカー2018年5月10日号

※ 本記事の編集部が作製した前文に事実誤認がありましたので、修正いたしました。関係者の皆さまにはご迷惑をおかけして申し訳ありません。謹んで謝罪いたします。(2018.5.2 13:30)

 


■責任はドライバー、本質的な問題はクルマにあり

実証実験中のウーバー車が起こした自動運転車の事故は様々な影響を与えている。まず今回の事故の責任については、なかなか難しい状況になると思う。もちろん直接的な責任は自動運転車の運転席に座っていたドライバーにある。

そもそも実証実験の条件が「免許を持っているドライバーを乗せる」なのだから当然。けれど事故を起こした人物は、自動運転の専門家にほど遠いシロウトの臨時雇いだった。だからこそ緊張感なく「単に座っていた」だけ。

どうやらウーバーは「誰でもよい」と考えていたようだ。確かに現在行われている実証実験車を見ると『レベル4』であり、本来なら運転手がいなくても走行可能。常時監視し、すぐに運転を代わらなければならない『レベル3』とまったく違う。

もう少しわかりやすく書くと、レベル3だと足はブレーキペダルのすぐ近くで待機させ、手もハンドルをすぐ握れるポジションをキープしなければならない。足を座席の上で組んだり、手を頭の後ろで組んだらダメ。

レベル4ならどうか? 自動車メーカーが描く一般的な予想図を見ると、運転席に座っているものの新聞を読んだり、さらには横を向いて同乗者と話をしている。レベル3だと常に「気をつけ!」。レベル4は「休め」でOK。

人間の運転より安全なハズなのだ。事故を起こしたドライバーのように下を向いていても問題ない。したがって事故を起こした直接的な原因は監視人ながら、本質的な問題は車両にある。

■今回のケースは技術的に止まれて当然の事故

いまは無人での実証実験を始めるための秒読みを始めている段階。おそらく事故を起こしたドライバーは、通常の運転時の事故とまったく違い、罪の意識も薄いだろう。前述のとおり、そもそもウーバー側は「法規を満たすため運転手を座らせている」だけ。

しかも歩行者は見とおしの悪い暗い道で、自転車を押しながら、走行している自動車の前を横切ろうとした。歩行者側の過失だって大きい。いろんな意味で情状酌量されるに違いない。

いっぽう、自動運転技術を開発している側からすれば、今回の事故は大きな問題だ。自動運転車両の屋根の上に付いているライダーと呼ばれる走査型レーザー、本来なら夜間の歩行者のような対象物をハッキリ探知可能で、今回も探知できていたと思う。

基本的には夜間だろうが雨天だろうが路上の人物を感知できる性能がなければならない。そのための研究を地道に続けているメーカーも多いが(写真はホンダの自動運転実験車)
夜間だろうが雨天だろうが路上の人物を感知できる性能がなければならない。そのための研究を地道に続けているのが国産メーカーだ(写真はホンダの自動運転実験車)

なぜ減速や停止、またはドライバーへの注意喚起ができなかったのだろう? 現段階では、絶対に起きちゃならない事故形態だが、海外の自動運転推進派は、開発を止めない。

さて。我が国は高い成功率を誇る宇宙ロケットの開発に成功している。けれど不思議に「人を乗せちゃえ!」という論議にならない。こらもうみごとなほどの慎重度である。責任を取りたくないワケ。

完全自動運転を行う場合も、同じような状況になっていくと思う。最近「レベル4の事故の責任は運転者か自動車メーカー」だと国が言い始めてます。となれば日本の自動車メーカーは自動運転に踏み込まないと思う。

自動運転の実用化を急ぎ海外勢に認可を出したなら事故は国の責任だ。

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