毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産 ミストラル(1994-1998)をご紹介します。
文/伊達軍曹、写真/NISSAN
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■パジェロ ランクルに切り込んだ日産のクロカンモデル ミストラル
1990年代初頭のいわゆるRVブームまたはクロカンブームの最中に人気を集めていた、ロングボディで7人乗りの三菱パジェロなどに対抗するべく、スペインで生産され欧州で販売されていたテラノIIを日本向けに手直しして輸入。
しかし、いかにも欧州車然とした「良い意味での高級感のなさ」が日本のユーザーにはウケず、輸入開始からわずか約5年で(日本市場向けは)販売終了となったクロカン四駆。
それが、日産 ミストラルです。
日産 ミストラルは、日本へ輸入される1年ほど前から日産のスペイン工場で生産され、欧州では「テラノII」との車名で販売されていました。
また「フォード マーベリック」という名前でヨーロッパ・フォードにOEM供給されたモデルでもあります。
シャシーは初代テラノなどと共通のスチール製ラダーフレームで、搭載エンジンは、欧州向けにはさまざまなタイプが用意されていましたが、日本へ輸入されたのは2.7Lの直4OHVディーゼルターボのみ。
トランスミッションも日本仕様は4速ATのみです。駆動方式は、2速トランスファーギアを持つパートタイム式の4WDでした。
イタリアのデザインスタジオ「I.DE.A」が担当したスタイリングは欧州車らしいプレーンなもので、折りたたみ可能な2列目および3列目シートを備える7人乗り。
同時期のテラノより高い全高となっているため、室内スペースは十分な広さが確保されていました。
ミストラルは走りも決して悪くはなく、最高出力100ps・最大トルク24.8kgmのTD27B型ディーゼルターボユニットはなかなかトルクフルで、欧州仕込みの足回りも好感が持てるものでした。
そんな日本市場向けの日産 ミストラルは1996年2月に2ドアのショートホイールベース版を追加し、1997年1月にはヘッドランプを角型から丸形に変更するなどの各種テコ入れを行います。
しかしながら販売のほうはどうも振るわず、1998年8月には日本向けミストラルのスペインでの生産が終了となり、1999年2月には国内販売も終了となりました。
ただその後も欧州では、フェイスリフトを行ったうえで2006年まで生産されていましたが。
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