ここ7、8年ほど前からフェラーリと空冷ポルシェの中古車価格が高騰している。「あ~、もう手が出せない、昔はあんなに安かったのに……」と、昔の3~5倍以上の価格を見て溜息をつく今日この頃。
どうしても欲しいと思う人のなかには、安いモデルはないかと、中古車検索サイトを暇さえあれば探しているという人も多いのではないだろうか。
しかし、安いのにはワケがある。価格は安いが買ったら最後、故障頻発、メンテナンス費用、維持費と出費の連発で、泥沼にハマってしまう例も少なくない。
そんなことにならないための助っ人、輸入中古車記者生活25年の伊達軍曹に登場いただいて、泥沼にハマらないためのフェラーリ&ポルシェの購入術を伝授してもらおう。
文/伊達軍曹
写真/フェラーリ ポルシェ
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■安い出物にはそれなりのワケがある
筆者の場合は「輸入車専門の中古車記者生活」もかれこれ25年となるため、もはや中古の輸入車を買って泥沼にハマることは(ほぼ)絶対にない。
車種ごとの適正相場をおおむね把握しており、そして「平均価格よりあまりにも安いモノ」にはたいていの場合、よろしくない何かが付いて回ることをよく知っているからだ。
しかし知識や経験が特に豊富ではない分野、例えば「中古戸建て住宅」などにおいては、爆安な値段につられて粗悪な物件を購入してしまい、入居後に「床が斜めっている」「雨漏りがひどい」「地縛霊が出る」などといった泥沼にハマることも大いに考えられる。
ここでは、そんな筆者が25年にわたる輸入車専門中古車記者生活を通じて得た知見をベースに、「買うと泥沼にハマるフェラーリ&ポルシェ」の一覧を記したいと思う。
中古のカローラで泥沼にハマったところで被害額などたかが知れているが、車両も部品も高いフェラーリ&ポルシェの場合はそうもいかない。
経済的な破滅を避けるためにも、「買ってはいけないフェラーリ&ポルシェ」にまつわる以下の参考情報をあらかじめ把握しておいていただきたいと、切に願うのである。
■泥沼にハマるフェラーリはコレ!
ではまいろう。まずはフェラーリ編。中古フェラーリというとF355が一番人気だが、昨今は大人気のため相場が大上昇し、安いモノでも1200万円ぐらい、コンディション良好な個体は1000万円台の後半である。
そのため「F355はちょっと難しいな……」と考えた際に、脳内にさんぜんと輝くのが360モデナの格安物件だ。
F355は底値でも約1200万円だが、360モデナの底値系物件(6MTではなくF1マチックのやつ)は約700万円。もちろん700万円というのも大金だが、「……もしかしたら工面できるかも?」とリアリティを感じさせる金額ではある。
だがそこで感じるリアリティこそが、泥沼への一丁目一番地だ。もちろん中古車というのは新車と違って「絶対にこうなる!」という断言はできないものだが、700万円付近の360モデナF1を購入した後は、おおむね下記のような泥沼が待っている可能性が高いだろう。
■安っ! と思わず飛びつきそうなフェラーリ360モデナF1が待ち受ける泥沼
●納車後、秒殺でF1マチックが逝く。
●その修理代に約60万円がかかる。
●さらに、未交換だったタイミングベルトの交換も必要になる。
●その交換代金見積もりもかなりの額となる。
●その他モロモロの不具合も出る。
●嫌気が差し、早々の売却を決意する。
●だが粗悪な個体であるため、業者は二束三文でしか引き取ってくれない。
●長期ローンで購入していた場合、けっこうな額の残債だけが残る。
……あまり考えたくもないシナリオだが、これが底値系360モデナF1の現実に近い。
F355などと比べれば比較的手ごろな相場であるフェラーリ360モデナに魅力を覚えた場合は、MTでもF1でも「おおむね1000万円以上」をひとつの目安としながら、じっくり検討するべきなのである。
またそのほかのフェラーリ各モデルにおいては下記の泥沼に注意を払い、「底値系には手を出さない!」という必勝の信念を持ちながら探していただきたい。
フェラーリF355 F1クーペの中古車情報はこちら!
フェラーリF355 F1スパイダーの中古車情報はこちら!
●F355 F1の泥沼
→F1マチックのECUが壊れると、ほぼ修理不能。そしてF1マチックのECU以外の部分もいろいろ大変に。F355 F1自体をお勧めしないが、買うなら「1100万円以上」を目安に。
●456GTの泥沼
→故障に次ぐ故障で「不具合の総合商社」状態に。買わぬが吉。
●FRのフェラーリ全般の泥沼
→コンディションについては一概には言えないが、全般的にリセール相場が低いため、ローンで買った場合は残債が残りがち。お金持ち以外は買わぬが吉。