「SFは前に行った人が速い、強いでいい」WEC世界王者・中嶋一貴かく語りき

■ドライバーにとってのSFとその難しさ

エンジン以外は同じものを使うスーパーフォーミュラはチームやドライバーの技量が試される「人間勝負」のカテゴリーだという
エンジン以外は同じものを使うスーパーフォーミュラはチームやドライバーの技量が試される「人間勝負」のカテゴリーだという

 SFは、やはりドライバーの純粋なスピード、強さを競うレースだと思います。もちろんクルマやタイヤをいかに使うかのという難しさはありますが、SGTやWECなどと比べると使う道具はイコールに近い。

 エンジンはトヨタとホンダで異なりますが、それ以外の部品は基本的にみんな同じものを使っている。それらをいかにうまく使うか、チームとエンジニアの知恵が試されるしドライバーの技量も試される。本当に人間勝負のカテゴリーだと思います。

 本当に難しいクルマで、経験=技量というわけでもない。タイヤのふるまいも、気温や路面のゴムの乗り具合だとかでいろんなところで少しずつ微妙に変わってくる。『これをこうしたらこうなる』というのが毎回違うので、もうホントに頭が痛い(笑)。

 引き合いに出して申し訳ないですが、山本(尚貴)選手は過去に二つのチームでタイトルを獲ったドライバーです。今年はナカジマに行って、チームメイトの大湯(都史樹)選手は予選決勝とも2番だったのだから、山本選手が遅い理由はないわけじゃないですか。

 なのに何かが少し噛み合わないだけで、Q1で敗退してしまうのがフォーミュラの難しさではありますよね。噛み合わない理由が本当に謎で、そのレースで優勝争いをしている選手以外はみんな『なんでだろう?』と思っていると思います。

 ただ、わからないからこそ面白いしチャレンジしがいがある。クルマでできることに限界があるので、人間がいかに対応するか、できるかというところが大事になる。

 宮田や大湯選手など、ほとんどルーキーに近いような若い子が前に行ったりするのをみると、経験がどれくらいウェイトを占めるのか難しいところではありますね。いまあるものでいかにマシンの旨味を引き出すかという勝負であって、結局は知恵の出し合い。

 そのあたりドライバーにとって重みがあるというか、意味合いや思いが強い、勝った時の達成感の一番大きいカテゴリーだと思います。

 そんなドライバーの気持ちと、俗に言う『盛り上がり』が一致しないのが残念なところではありますが。

■SFの面白さを伝えるために

若いドライバーにフォーカスしてほしい、と中嶋選手。しかし黙って抜かれるようなタマではない。若手の目標となりつつベストなパフォーマンスを見せてくれるだろう
若いドライバーにフォーカスしてほしい、と中嶋選手。しかし黙って抜かれるようなタマではない。若手の目標となりつつベストなパフォーマンスを見せてくれるだろう

 理由が何であれ、前に行った人が速い!強い!、でいいと思うんです。人間にフォーカスしてもらえればいい。

 SGTはいろんなクルマが走るからクルマ好きが集まる。SFは人間的な部分、キャラクター的なところを深掘りして伝えて、ファンを増やすしかないんじゃないかな。

 やっているレース自体は、好きな人がみたらもう十分に面白い内容になっている。これ以上、面白くするためにどうのこうのという議論じゃなく、どういうふうに人に見せるかというところだと思います。

 今年からオーバーテイクシステム(OTS)が200秒使えるようになり、確かにボタンを押す機会は増えました。ただ、相手が押したらこっちも押すみたいなことになるので、駆け引きする回数と時間は長くなるけれど、正直なところ、展開にそんなに大きな影響があるわけではないと思います。

 とにかく、速い人、強い人、そして若い子たちにフォーカスしてもらうことが、SFの盛り上がりにつながると思います。付け加えるなら、でも、おじさんもよろしくお願いします、というところですね(笑)。

【画像ギャラリー】スーパーフォミュラ2021年シーズンスタート!! 中嶋一貴開幕戦記

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