ヤリスが2020年度販売台数で覇者N-BOXを逆転した最大の要因は?

■ヤリスとヤリスクロス、それぞれ堅調に売れている

 またヤリスクロスの発売は2020年8月だから、販売されていた期間が短い。2020年度の登録台数には、ヤリスクロスの本来の人気度は反映されていない。そこで直近となる2021年1~3月の1カ月平均登録台数を算出すると、以下のようになった。

●2020年1月から3月/1カ月平均の登録・届け出台数
[1]N-BOX:2万708台
[2]スペーシア:1万5967台
[3]タント:1万4245台
[4]ルーミー:1万3132台
[5]アルファード:1万1368台
[6]ヤリス:1万820台
[7]ヤリスクロス:1万577台

 以上のように直近3カ月の登録・届け出台数ランキングでは、N-BOXが依然として1位だ。直近3カ月には決算期の3月も含まれるため、1カ月平均の届け出台数が2万台を超えた。

N-BOXやスペーシアは派生機種を含まない数字だ
N-BOXやスペーシアは派生機種を含まない数字だ

 2位はスズキ『スペーシア』、3位はダイハツ『タント』だから、上位3車種はすべて全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた軽自動車だ。これらのスーパーハイトワゴンは、軽乗用車の販売総数の内、約50%を占める。そのために国内販売のトップ3車になった。

 4位には登録車(小型/普通車)が入ったが、ヤリスではなくトヨタ『ルーミー』だ。コンパクトカーだが、全高は1700mmを上まわり、後席側にはスライドドアを装着する。軽自動車のスーパーハイトワゴンに似たボディを備えることで、好調に売れている。

ルーミーはダイハツ『トール』のOEM車両。なので予防安全機能も「スマートアシスト」が搭載される
ルーミーはダイハツ『トール』のOEM車両。なので予防安全機能も「スマートアシスト」が搭載される

 以前は同じトヨタに、ルーミーの姉妹車として『タンク』が用意されていたが、トヨタの全店で全車を扱う販売体制に移行したのを受けて廃止された。その結果、需要がルーミーに集中して登録台数を一層増やしている。

 5位はトヨタ『アルファード』だ。売れ筋価格帯が400~550万円に達するLサイズミニバンだが、絶好調に売れている。全店で全車を扱うようになり、トヨタ店やトヨタカローラ店でも売れ行きを増やした。姉妹車の『ヴェルファイア』は今でも用意されるが、アルファードの約10%しか売れていない。全店が全車を扱う体制になり、フロントマスクのデザインの違いが大幅な販売格差に繋がった。

 そしてようやく、6位にヤリス、7位にヤリスクロスが入る。人気車であることに変わりはないが、4位に同じトヨタが手掛けるコンパクトカーのルーミー、5位にもトヨタの高価格車となるアルファードが入ったことを考えると、ヤリスは注目すべき売れ行きではないだろう。

 それでもヤリスクロスは好調と判断される。ヤリスに比べると約30万円高いSUVだが、2021年1~3月には同程度の台数を登録したからだ。

 一方、2020年の前半に絶好調に売れたコンパクトSUVのトヨタ『ライズ』は、ヤリスクロスの登場に伴って登録台数を下げた。ライズは登録車の1位になった時期もあるが、2021年1~3月の1カ月平均は9053台だ。堅調ではあるが以前の勢いは薄れた。

■逆に、あえてバラバラ算出されるノア/ヴォク3姉妹

 トヨタの開発者は、ヤリスが登場した時、「小型車専用のエンジンとプラットフォームを新規で開発した。今後もさまざまな車種を投入していく」と述べた。ヤリスクロスやGRヤリスもそこに含められ、今後はかつてのヴィッツをベースに開発された『ファンカーゴ』のように、空間効率の優れた新型コンパクトカーも登場するだろう。

 車種をシリーズ化する方法は新しいものではなく、かつてはトヨタ『カローラ』や『コロナ』も豊富なボディバリエーションをそろえた。シリーズ化して、強い存在感を発揮させるのがねらいだ。「ヤリスが国内販売ナンバーワン」という話題性を得られることも、目的のひとつに位置付けられる。

 販売台数の多い車種は、多くのユーザーが購入して使っている以上、優れた商品と判断できる。しかし1位とか2位といった順位争いになると、前述のカラクリも絡む。ルーミーのように、従来は姉妹車だった車種を統合したことで、登録台数が大幅に増えることもある。

 例えばトヨタには、『ヴォクシー/ノア/エスクァイア』というミニバンの3姉妹車がある。エスクァイアは少し異なるものの、基本的にはアルファード&ヴェルファイアのように同じクルマだ。

ヴォクシー系3姉妹の販売台数を合わせて見ると、ルーミーより上に入る。なので見方によっては、こちらが今日本で一番売れている登録車とも言える
ヴォクシー系3姉妹の販売台数を合わせて見ると、ルーミーより上に入る。なので見方によっては、こちらが今日本で一番売れている登録車とも言える

 そこで2021年1~3月の1カ月平均登録台数を見ると、ヴォクシーが7883台、ノアは4719台、エスクァイアは1415台だ。合計すれば1万4017台だから、ルーミーの1万3132台を超えてタントの1万4245台に迫る。ヴォクシー系3姉妹車の人気は相当に根強い。発売当初のヴォクシー系3姉妹車は、1カ月に合計1万8000台を生産できる体制を整えていた。

 またマイナーチェンジを控えている時には、登録・届け出台数が一時的に大きく下がることもある。このようにクルマの売れ行きを見る時には、いろいろな注意が必要だ。曖昧な部分を多く含んでいるから、あまり厳密に捉えないほうがよい。

【画像ギャラリー】合算とはいえ実力は文句なし! ヤリス&ヤリスクロスを徹底チェック!

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