■トラックにAMTの搭載が普及するわけ
ところで、なぜトラックにはAМTの普及が進んでいるのだろうか?
そこには歴史的な背景が影響している。商用車では以前、排ガス規制に対応する必要に迫られ、かつてのNA(自然吸気)エンジン主流の時代からターボインタークーラーエンジンが導入され、エンジンのダウンサイジングが図られるようになった。
ターボ化は排ガス規制対応に必要で、高過給・高燃焼圧化によるダウンサイジングは、厳格化する排ガス規制の中で省燃費性能の両立に不可欠というわけである。
しかし、小排気量エンジンにはその弱点を補完する技術も不可欠。発進性の確保にはワイドレンジのミッションの多段化が必要で、そのために煩雑なミッション操作をロボタイズするAМTが採用されるようになったのだ。ちなみに現在の大型トラックのAМTは12段が主流である。
もっとも、導入され始めた当初はAМTの評判は芳しくなかった。それが尾を引いて未だに敬遠するドライバーがいることも事実だが、昨今のAMTはかなり進化していて、ひと昔前のモノとは比べ物にならないほど、スムーズな変速を実現。低速域の制御もドライバーの意のまま運転できるようになっている。
さらに最新トラックに搭載される先進技術の多くが、AМTの制御なくしては成り立たなくなっていることにも注目しなければならない。その代表格がACC(アダプティブクルーズコントロール)である。
最新の大型トラックでは、ACC作動中に速度が乗ったら、自動でクラッチを切った状態にして惰性力で燃費を稼ぐエコロール、あるいは3Dマップデータなどから勾配を予測して、最適なギア段の先読み制御をする機能などが備わっている。
つまり、AМTを自動制御することで「人」の介入を上回る省燃費運転が可能になっているわけである。
かつてオートマ車といえば「イージードライブ」が通り相場だったが、AМTは新たな可能性を発揮する次世代のトランスミッションに進化しているのだ。
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