アルファード/ヴェルファイアをはじめとしたミニバン、それに軽ハイトワゴンのカスタムモデルなどのフロントマスクはモデルチェンジの度にギラギラしたメッキパーツを多用してド派手さを増し、さらにコンパクトカーまでド派手顔が出現している。
このドヤ顔デザインが増加している今の日本車の傾向。もちろん購入したーオーナーは満足しているようだけど、「日本に溢れてくるとさすがにちょっと恥ずかしい」と思う人も増えてきた印象。そこで自動車デザインやパッケージング、売れ筋車に詳しい自動車ジャーナリストの3人に、それぞれ「ド派手顔グリル、どう思いますか?」と聞いてみました!
文:清水草一、片岡英明、渡辺陽一郎
初出:『ベストカー』 2018年5月10日号「春の大激論」より
■清水草一「シンプルな機能美こそ究極の姿」
自動車デザインは人それぞれ好みの問題という見方もあるだろうが、やはりよしあしの面もある!
軽ハイトワゴンのワル顔は、「軽だからこそナメられたくない」というユーザーの潜在欲求に応えたことで爆発的に売れたわけで、そういう需要を掘り起こしたのはビジネス的には超エライ! が、ムリヤリ顔だけワルくしているモデルもある。
といっても全部ダメなわけではなく、ワゴンRはワルなスティングレーのほうがしっくりきているといった例もある。とはいえ、ノーマルモデルのほうがデザイン的に完成度が高いことが多い。
なにせ軽の本質は機能性。初代ワゴンRのような、シンプルな機能美こそが究極の姿だ。ワゴンR(欧州仕様)をわざわざ所有していたガンディーニ氏も、その点を高く評価していたのだ!
■片岡英明「日本だけの流行ではないが……」
最近はド派手なフロントマスクが好まれている。ただし、これは日本だけの流行ではないのだ。
欧米でもメッキ塗装を多用し、厚化粧したクルマが増えている。存在感をアピールするためだが、日本では欧米より至近距離で見ることが多いから、ドヤ顔が目立ってしまうのだ。
今は派手なフロントマスクの車種も多い背の高いミニバンやSUVがファミリーカーの時代である。歩行者保護の安全性を確保するために、ボンネットの位置を意識して高くデザインするようになった。当然、フロントマスクは大きくて目立つ。
しかし、そのいっぽうで薄型のLEDヘッドライトが主流になりつつあるし、ラジエターのいらないEVも今後は増えてくる。そのため、威圧的でド派手なグリルを捨て、スマートなフロントマスクのクルマがどんどん出現する可能性も高いのだ。
それを多くの人が支持すれば、ドヤ顔のクルマは減るはずだ。
■渡辺陽一郎「好きなデザインを選べばいいが」
クルマを購入する時、運転感覚や居住性が気に入っても、外観、特にフロントマスクが好みに合わないと避けてしまう。自動車メーカーは販売しやすい外観を追求して、ミニバンや軽自動車の背の高い車種は派手なメッキグリルを使ったフロントマスクとエアロパーツのスタイルに行き着いた。
走りの楽しさを求めるタイプのクルマ好きは、高重心のボディにエアロパーツを装着する矛盾とアクの強い造形を気にするが、クルマに詳しくない人は、単純にカッコイイとかオシャレと受け取ることが多い。このような派手なカスタム系は中高年齢層の女性にも人気があったりする。当たり前の話だが好きなデザインを選べばいい。
ただし派手な外観がドライバーの気分に影響を与え、運転まで派手というか乱暴になるとすればとても問題だ。安全性の観点から、外観がドライバーの心理に与える影響なども研究する必要があるとも考える。
コメント
コメントの使い方