■ヴォクシーが売れている、なぜ?
ここで注目したいのがヴォクシー。
ラインナップは特別仕様車のZS“煌(きらめき)III”(ガソリン/ハイブリッド、7人乗り/8人乗り、2WD/4WD【ガソリンのみ】)と、ZS(ハイブリッド/ガソリン、7人乗り/8人乗り、2WD/4WD【ガソリンのみ】)となっており、ZSのみというモノグレード構成となり、そのZSベースの特別仕様車がラインナップされているだけとなっている。
アルファード&ヴェルファイアの兄弟車では、ヴェルファイアが最新の改良でモノグレード構成となったが、こちらはアルファードに販売台数では大差をつけられている。3兄弟中販売トップを続けるヴォクシーとは様子がかなり異なる。
ノア系3兄弟では、なぜモノグレード構成のヴォクシーが最も売れているのだろうか。2017年~2020年の暦年(1月から12月)での年間販売台数を見ると、ヴォクシーはノアに、かなりの差をつけ、常に3兄弟のなかではトップの販売台数を維持している。
2020年5月からは、すべてのトヨタ系ディーラーにおいて、ノア系3兄弟を購入することができるようになったのだが、累計販売台数が3兄弟のなかで最も多く、その既販ユーザーの乗り換え需要がまず多いことが、ヴォクシーが今もなおよく売れている理由のひとつとして挙げられる。
ただし、統計を見るかぎりではノアからヴォクシーへの乗り換えというのは目立っていない印象を受ける。ノア系のようなミドルサイズで背の高いミニバンユーザーのメインは、現役子育て世代となる。
子どもが増えるなかで、「そろそろミニバンにしようか」となるのが定番の展開と考えていいだろう。そして子どもが“親離れ”する年齢になるまでに、最低でも1度は新車へ乗り換えることになるようだ。
ミドルミニバンでは買い物や、子どもの習い事の送迎などで、日常的にお母さんが運転する機会が多く、お父さんは週末や、帰省、レジャー時など以外はあまり運転しないケースも多い。このような使用状況のなか、「新車に乗り換えよう」となると、「同じクルマに乗り換えたい」とするお母さんが目立つとのこと。
実際はモデルチェンジすれば、運転席まわりも見た目は変わっているのだが、“操作系が慣れているので、同じクルマがいい”とする女性が意外なほど多いとのことである。他メーカー車を選ぶと、操作方法の一部が変わってしまうという不安が大きくなるようである。
これはミニバンに限った話ではなく、モデルレンジの長いアクアなどでは、3台乗り継いでいるという女性もいたりする。つまり、過去に3兄弟のなかでも販売した台数の多いヴォクシーは、乗り換え母体も多いので、3兄弟のなかでそもそもトップになりやすい環境になっているのである。
■エアロ系ミニバンといえばヴォクシー
また、ミドルミニバンクラスの売れ筋は、“オラオラ顔”ともいわれるエアロ系モデルが、ノア系以外ではセレナやステップワゴンでも売れ筋となっている。ヴォクシーはその人気のエアロ系で、顔つきのおとなしい標準モデルの設定はない。そのためノアと売り分けが上手にできているといってもいいだろう。
そして、さらにゴージャスなほうがいいというと、エスクァイアになるので、エスクァイアが3兄弟で最も販売台数が少なくなっているとみることができる。
ノア系3兄弟の源流をたどると、キャブオーバーワゴンのタウンエースとライトエースにいきつく。しかし、当初この2台は兄弟車ではなく、ライトエースの兄貴格として、タウンエースがライトエースに遅れて1976年にデビューしている。
そして2代目タウンエースは1990年にビッグマイナーチェンジして、この時にライトエースと兄弟車関係となった。その後1996年にミニバンスタイルを採用したFRレイアウトのタウンエースノア&ライトエースノアがデビューする。
そして、2001年にFFレイアウトを採用する本格ミニバンとしてノアがデビューすると、ライトエースノアは、“ヴォクシー”となった。
ヴォクシーとなった時に、すでに実用性を強調したノアに対して、スタイリッシュなキャラクターが与えられており、その後は“エアロ系ならヴォクシー”といった流れができていったのである。
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