■「同じクルマに乗り換えたい」層が支えるノア系3兄弟
ライバルのセレナやステップワゴンはどうなっているかを見てみよう。2020年度の年間販売台数の前年比はセレナが77.7%、ステップワゴンが76.4%となっている。
実はコロナ禍以前から、ミドルクラスミニバンは2Lエンジンがメインユニットになっていることもあり、ボディサイズもあいまって「大きすぎる(おもに排気量)」として、シエンタやフリードへダウンサイジングした乗り換えが目立っていた。
現行ステップワゴンのガソリン車は1.5Lだがターボ付きとのことで抵抗のある女性がいるようだし、ハイブリッドは2Lエンジンベース。
セレナはe-POWERがレンジエクステンダーで発電用の1.2Lエンジンとなるが、前述したように、操作系が変わるとして抵抗を示す層も存在する。そして、ガソリン車は簡易ハイブリッドとなる2L。
日産にはシエンタやフリードに相当するスモールミニバンがないので、代替時はe-POWERか2L車のいずれかに流れる傾向があるといえるし、ステップワゴンは相当数がフリードに流れているといえよう。
そのなかで、ノア系3兄弟にあまり“ブレ”が見えないのは、前述したアルファードではないが、「シエンタにちょい足しでノア系に乗れますよ」という売り込みができるだけではなく、シエンタへダウンサイズの動きがあっても影響が少ないほど、3兄弟トータルで見れば、かなりの既納ユーザーを抱えていることも大きいといえるだろう。
ノア系だけではないが、コロナ禍というある種非常事態の世の中にあっては、より確かなブランドを選びたい消費者心理があり、それがトヨタ車に多く流れるきっかけになっているというものも手助けしているようである。
さらには、マツダはミニバンのラインナップをやめているので、販売終了したマツダのミニバンとなるビアンテのユーザーもノア系3兄弟が積極的に取り込んでいると見ていいだろう。販売終了車のリセールバリューは目立って下落傾向となるので、それにこりて、リセールバリューのいいトヨタブランド車に流れやすくなっていると考えられる。
ラインナップをやめるのは簡単だが、やめてしまえばユーザーは他メーカーに流れてしまい、仮にミニバンを復活させようとしても、ゼロどころか“ミニバンをやめた過去がある”としてマイナスからの出発になってしまうのである。
ミドルミニバンは、低年式となってもそれ相応のニーズがあるので、全体的に見てもリセールバリューは良好といっていい。一世代前のモデルでも「ええっこんなに?」という販売価格を掲げる中古車も多い。
■兄弟と併売になったヴォクシーの今後
2020年5月からスタートした、トヨタ系ディーラー全店での全車(一部を除く)併売化により、それまでネッツ店専売だったヴォクシー、カローラ店専売だったノア、トヨタ店&トヨペット店のみの併売だったエスクァイア、いずれも全店併売となった。
もともとトヨタ系ディーラー4チャンネルのなかで、ネッツ店は若者向けのモデルをメインに扱ってきたので、そのなかでヴォクシーもエアロ系モデルがよく売れるようになり、“エアロ系ならヴォクシー”みたいなイメージが形成されていった。
そのなかで、全店併売後になると、3兄弟中ヴォクシーの販売に積極的な動きを見せるようになっていた。人気俳優を起用して、ベタベタな家族的なムードではない、格好のいいパパ&ママをイメージするテレビコマーシャルも積極的にオンエアしている。
年末(来年初頭か?)にはフルモデルチェンジが行なわれる予定となっているノア系だが、次期型ではエスクァイアはラインナップされないとされている。引き続きエアロ系のヴォクシーという立ち位置を守り、兄弟車のなかでは販売トップを維持していきそうである。
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