■欧州でもタクシーの自動運転車両が参加
こうした人と機械を結ぶHMIは将来的に訪れる本格的な自動運転社会にとって重要です。自動走行を行っている自車(タクシー)が、なぜ速度を落としたのか、どうして止まっているのかなど現状を乗客に知らせることで、自動運転技術に対する信頼感が抱け、安心して乗車できるからです。
LiDARで有名な「ヴァレオ」(フランス・パリ)からは、外界センサーにLiDARのみを用いてレベル4相当の自動走行を行う実証実験車の同乗試乗メニューが提供されました。ヴァレオのシステムもティアフォー同様に、タクシーでの運用が開発視野にあると言います。
LiDARとは光(レーザー光)を使ったセンサーのことです。Honda SENSING Eliteを搭載したホンダ「レジェンド」や、Advanced Driveを搭載するトヨタ「MIRAI」やレクサス「LS500h」、さらにはアウディ各モデルにも搭載されています。
LiDARのざっくりとした特徴は、物体の形や距離を複数同時に、そして正確に認識できることにあり、空間把握が得意なセンサーともいえます。
ちなみに、Advanced Driveが使用するLiDARは波長領域 800ナノメートル台のレーザー光を用い、広範囲(メカスキャン方式で水平角120度)かつ長距離(200m以上)まで検知します。
おおまかにいえば、これまでのミリ波レーダーや光学式カメラが得意としてきた分野も限定的ながらLiDARがカバーできるため、システム全体としての検知能力が高まります。これが最大のメリットです。
デメリットはセンサー単体で10万円以上と高額であることや、センシングできる点群情報の量が膨大になるため解析に手間が掛かることです。
■小型バスでは乗組員はあくまでスタンバイ要員
一方、小型バスにおける自動運転技術の開発も進んでいます。
同じくSIPの会場では「コンチネンタル」(ドイツ・ハノーファー)が開発したミリ波レーダーを搭載し、これを主センサーとして自動走行を行う実証実験用の小型バスに試乗しました。この小型バスは2019年に日本国内でのナンバープレートを取得しています。
ベース車両の小型バスはイージーマイル製(フランス)の電気自動車です。これにコンチネンタルが独自で開発した自動運転向けのソフトウェアを組み込み、立ち席の乗客としても安心できるスムースな発進/停止、そしてカーブ制御を行います。
今回は、お台場周辺の一般道路を10分程度、レベル4相当の自動走行を行いました。運行時は15㎞/hを最高速度として、カーブは直線部分で12~13㎞/hまで減速して横Gを抑えます。車両前後の各所に配置したミリ波レーダー(77GHz)は市販車が搭載するものと同一規格です。
コンチネンタルの小型バスはミリ波レーダーのほかに、信号機情報や車線情報、歩行者や他車の認識に光学式カメラを用い、V2Xには無線通信技術を使用します。
光学式カメラが強い斜光を受けて認識率が著しく低下し、さらに無線通信にトラブルが発生するなど、自動走行に必要な情報が取得できない場合には、同乗するドライバーが一時的に運転操作を行います。このドライバーはこうした緊急時のみ運転操作を行うスタンバイ要員です。
■自動運転バスの課題は
ティアフォーやヴァレオの実証実験車両と同様に、このコンチネンタルの小型バスも横断歩道に歩行者がいる場合には、歩行者の通行を最優先にする制御が組み込まれています。さらにこの小型バスでは、停止後すぐにEPB(電子制御パーキングブレーキ)を作動させるなど、徹底した安全策が採られていました。
しかし筆者には、この横断歩道前の停止制御だけでは、実際の運用に際して不十分ではないかと思えました。なぜなら、歩行者とシステム(この場合は小型バス)とのコミュニケーションが取りづらいからです。
現状、小型バスにはドライバーと、ドライバーを補佐する保安要員の2名が乗務員として乗込んでいますが、後述するように保安要員は削減の方向で法改正が進んでいます。また、将来的にはドライバーも不要とする議論や技術開発が行われ、その場合、緊急時の運転操作は遠隔操作が前提になるといいます。
よって、実際にレベル4以上の自動運転車両を公道走行させる際には、現状の丁寧な運転操作に加え、歩行者との確実なコミュニケーション手法の確立が重要課題です。
例えばメルセデス・ベンツの「F015 Luxury in Motion」などが示すように、音声で「お先にどうぞ!」と発話したり、レーザー光で歩行者に先行を促したりするなど、人とシステムとのアイコンタクト的なコミュニケーション手法が導入されると、運用面でのバリアフリー化が高まるのではないでしょうか。同様に、狭い道での離合や対向車からの譲り合い運転を受けた際の合図にもなるはずです。
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