■1980年代に登場したE30型3シリーズがBMWのセダン人気に火をつけた
もともとはマニアックな存在だったBMWが日本で一気にメジャーになったのは1980年代後半のことだ。
1981年に日本法人が設立される少し前から販売台数が急増し、ほどなく1985年に初めて1万台を突破するや、1987年には2万台を超え、1989年には3万台を大きく超えるほどの急激な伸長を見せた。
バブル景気に沸く日本の繁華街を闊歩する様子が印象的に目に映ったことから、当時はBMWのエントリーモデルだったE30型3シリーズが「六本木のカローラ」と称されたのも有名な話だ。
BMWが現在のポジションを確立できたのは、このE30の功績が大きい。アイコニックなキドニーグリルと丸目のヘッドライトをたずさえた端正なデザインは、それほどスタイリッシュというわけでもないのにやけに存在感があって羨望の的となったものだ。
その背景には、自動車メディアがはたした役割も大きい。BMWがこだわるストレートシックスのエンジンフィールやFRならではのハンドリングのよさを盛んに伝えたのが効いていて、それを味わわんがために買い求めた人も少なくない。
そして実際にドライブした多くの人が魅了され、口コミでさらに伝播して、「BMWは素晴らしい」というイメージが浸透した。まさしく評判が評判を呼んだわけだ。
1980年代は学生だった筆者も当時、知人のE30をドライブした際に、騒々しさは少々気になったものの、やはり日本車との小さくない違いを感じた。のちにE30を自身でも愛車とした時にも、しっかりとした走りや内外装の仕立てのよさなど、1980年代ですでにあれほどのクルマを作っていたことに感心したものだ。
1980年代や1990年代といえば、まだクルマといえばセダンが普通で、オヤジグルマっぽいイメージがついてまわったもの。
その頃すでにBMWは、セダンの形をしたスポーツカーを作っている旨を標榜していたように記憶しているが、当時のBMWがセダン主体のシンプルなラインアップだったことも、BMW=スポーティなセダンというイメージの形成に寄与していそうだ。
■BMW=スポーツセダンというイメージが定着した
それがすっかり定着して、これほどBMWのバリエーションが多様化した現在でも根強く残っていて、BMWのセダンにこだわるユーザーが少なくないように思える。
例えばXモデルは、BMWの熱心なファンはもちろんだが、よりよいSUVを探すなかでXモデルに行きつき選んだというケースも多いように感じられるのに対して、セダンはBMWのセダンが欲しいという意思を持った人が、あまりほかと比べることなく選んでいるような気がしてならない。
また、パワートレーンに視点を置くと、これまた興味深い傾向が見受けられた。
・3シリーズセダン(ガソリン:50、ディーゼル:40、PHEV:10)
・3シリーズツーリング(ガソリン:30、ディーゼル:70)
・5シリーズセダン(ガソリン:30、ディーゼル:50、PHEV:20)
・5シリーズツーリング(ガソリン:50、ディーゼル:50)
・X3(ガソリン:10、ディーゼル:80、PHEV:10)
・X5(ガソリン:10、ディーゼル:80、PHEV:10)
むろん車種によって選択肢は異なるが、全体像としては、ディーゼルの比率が想像以上に高く(とくにXモデル)、さらにはPHEVの人気が高まっていることも見て取れる。
そんななかでも、3シリーズセダンは唯一ガソリンのほうが高い。それはやはり、3シリーズセダンは価格帯が低めのグレードを選びやすいという事情もあるだろうが、BMWらしい走りを求めて購入しているケースが多いからにほかならないように思える。
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