■フェラーリに多い赤の塗装は劣化が早いはずだが……
屋根付き駐車場に保管されていたクルマでは、表面が痛むなどの症状が出るのははるかに遅くなる。私は現在、生産から32年を経たフェラーリ328を所有しているが、屋根付き保管しており、ボディは新車同様……は言い過ぎでも、新車並みに輝いている。
最も劣化の進行が速い塗装色は「赤」である。そして市場に出回っているフェラーリの多くが赤だ。しかし実際のところ、ほとんどのフェラーリは、新車時に近いコンディションを保っている。これは屋根付き車庫に保管されていたからで、フェラーリの塗装が優れているからでは決してない。
塗装の耐久性が高いのは日本車とドイツ車で、イタリア車やフランス車はそれより落ちる。青空保管で塗装のハゲが生じるまで、日本車やドイツ車が20年弱だとしたら、イタリア車やフランス車はそれより数年早い。いま現在、この差は縮まっているかもしれないが、結果がわかるのはずっと後なので、今のところはそういうことになる。
屋根付き車庫での保管が、ボディの美しさを保つカギであることは間違いない。かといって、コストをはじめさまざまな条件が必要となる屋根付きの駐車場は、おいそれと確保できるものではない。
■ボディカバーで重要なのは防水性なのか?
では、次善の策として、青空駐車にボディカバーをかけて保管するのはどうなのか? 前出の専門家に聞いてみた。
「ボディカバーをかけておけば、まず紫外線を防げます。日射に直接さらされることもないので、温度変化も小さくなる。長い目で見ると、この効果は非常に大きい」
「問題は湿気です。防水性の高いカバーのほうがいいように感じますが、どんなに防水しても、雨の湿気は必ず内側に入りますし、地面から立ち上る水蒸気を溜める効果もある」
「だからボディカバーは、ある程度防水性を捨てたほうがいい。雨が降ると水を含むように見える不織布製のカバーがおすすめです。雨が止めば乾きますし、内側の湿気も逃げてくれますから」
ボディカバーをかけたのに、その内側のボディが濡れていると、「せっかくカバーをかけたのに!」と思ってしまうが、実はそのほうがいいとは意外だ。ただ、一方でボディカバーは、スリキズを発生させる。
「カバーをかける前に表面のホコリを払っていても、チリやホコリが内側に入ることを完全に防ぐことはできません。カバーの脱着の際や、風による振動で、ボディに細かい傷が付くのは覚悟する必要があります」
「ただ、10年、20年という長いスパンで見ると、紫外線や温度変化による塗装の傷みのほうがはるかに大きい。毎日乗るクルマに毎日ボディカバーをつけるのは現実的ではないですが、たまに乗る程度の大事なクルマなら、不織布タイプのボディカバーをかけて、しっかり固定しておくことをおすすめします」
フェラーリでも、ボディカバーをかけて青空保管されている例はあるが、塗装の劣化は特に感じない。小さなスリキズよりも、日光からクルマを守ることのほうが重要なのである。
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