■悪名高きマツダ「国内5チャンネル構想」しかしそこからこそ生まれ得たプレッソ
今見てもなかなか素晴らしいエクステリアデザインであると思えるユーノス プレッソが、鳴かず飛ばずの1代限りで終わってしまった理由。
それは、ありきたりの話で恐縮ですが「バブルのせい」ということになるのでしょう。
そもそも、ユーノス プレッソという車が誕生した背景にも「バブル」がありました。
プレッソは、前述した1980年代末期からのマツダの「国内5チャンネル構想」があったからこそ生まれた車です。
そしてプレスが困難な形状のリアゲートや、非常に高額なコストがかかる「リアの巨大な三次曲面ガラス」を躊躇なく採用できたのも、言わばバブルのおかげです(しかしエクステリアに予算をかけた分だけ、インテリアにかける予算がなくなったそうですが)。
しかしその半面、当時のマツダの体力からすると無理があった国内5チャネル体制は、バブルとともにその「無理」が祟るようになってきました。
ほぼ「車名が違うだけの水増しモデル」が乱発されたことで1台ごとのキャラクターは曖昧になり、前述のとおり姉妹車の1.5L 直4エンジンをプレッソにも積んだことで、そのキャラクターはさらに曖昧になっていったのです。
そして世の中に不景気風が吹き始め、その後に絶望的なリアル不景気がやってくれば、ある意味「趣味の品」でしかないスペシャルティクーペというのは、真っ先にユーザーの購入検討対象から外れていきます。
また、最高出力うんぬんではなく「4気筒とは明確に異なる上質な走りを提供したい」という意図で採用された新開発の1.8L V6エンジンが、「V6のくせに馬力が足りない」的な、見当違いの批判を受けてしまったのも、ユーノス プレッソの悲劇だったかもしれません。
まぁ仮にそういった批判や「5チャネル体制」がなかったとしても、その後のスペシャルティクーペというジャンル自体の凋落は避けられなかったはず。
そのため、「ユーノス プレッソは生産終了になるべくしてなっただけ」というのが、シンプルな結論なのかもしれません。
しかしこの秀逸なエクステリアデザインは、1代限りでとっとと消滅させるには惜しい逸品だったと――2021年の今でも思うのです。
■ユーノス プレッソ主要諸元
・全長×全幅×全高:4215mm×1695mm×1310mm
・ホイールベース:2455mm
・車重:1100kg
・エンジン:V型6気筒DOHC、1844cc
・最高出力:140ps/7000rpm
・最大トルク:16.0kgm/5500rpm
・燃費:11.2km/L(10・15モード)
・価格:186万円(1991年式 Hi-X 5MT)
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