マツダ・ロードスターのデザインは世界一!!【デザイン水掛け論Online】

 かつて、『ベストカー』本誌に「デザイン水掛け論」という名物連載がありました。元日産のデザイナーである前澤良雄氏と自動車ライターである清水草一氏が、クルマのデザインに関して歯に衣着せぬ物言いで好き放題語りまくり、読者から多くの支持を得ていた人気企画です。

 各メーカーの社員にも多くのファンを抱え、雑誌を代表する連載に成長、大好評だったものの、2014年11月に前澤氏が急逝。やむなく連載は終了したのでした。

 今もなお「復活してほしい」という声はあるものの、前澤氏のいないまま「水掛け論」を復活させるのは難しい。しかしクルマのデザインに関してあれこれ気になるところを語る企画はあったほうがいい。

 そこで本稿では清水草一氏に最近のクルマのデザインに関して、往時を振り返りつつ語っていただこうと思います。

 第一回となる今回は「マツダ・ロードスターのデザインは世界一!!」。え、世界一って、「世界で一番いい」ってことですか? 本当に?? 拡大版でお届けします。

文:清水草一


■クルマのデザインの真髄は「シンプル」?

 私はカーマニアなので、生涯クルマ購入台数は47台に上るが、クルマの設計やら生産やら修理やらに関わったことは皆無。自分でできるのは洗車とタイヤ交換くらいだ。

 そんな私だが、12年余にわたり『ベストカー』誌にて、元自動車デザイナーと、対談の連載を持っていた。日産自動車で初代プリメーラやZ32フェアレディZのチーフデザイナーを務められた、前澤義雄さん(故人)である。

 前澤さんは大変舌鋒鋭い方で、いろいろなクルマのデザインをメッタ斬りにしたが、そのデザイン論はなかなかに難解で、なに言ってるのかサッパリ意味がわからないことや、まったく理解不能で的外れな(?)論評も多く、シロート代表である私とは、意見が鋭く対立した。

写真左が前澤義雄さん、右が清水草一さん。懐かしのコンビ評論はもう見られないけど、その魂を胸にお届けします
写真左が前澤義雄さん、右が清水草一さん。懐かしのコンビ評論はもう見られないけど、その魂を胸にお届けします

 が、その前澤さんは現役時代、初代プリメーラ(P10)やZ32フェアレディZなど、日産史に残る名車のチーフデザイナーを務めたのも事実。

 前澤さんはどちらのクルマに関しても、あくまでチーフデザイナーの立場であり、実際にデザインスケッチを描いたわけではないが、なにせこっちはシロート。どんなに反論したところで、岩壁にゲンコツを振り下ろすような安心感(?)があった。

 そして、12年以上にわたって前澤デザイン論を聞いているうちに、自動車デザインの基本中の基本のようなものを、理解するにいたった(ような気がする)。

 その中のひとつが、「シンプル・イズ・ベスト」である。

 この場合のシンプルは、「単純」や「簡素」とは違い、あくまでも「シンプル」。練りに練り、削ぎに削いだ美の核心とでも言おうか?

 今回は、その「シンプル・イズ・ベスト」について、書いてみたい。

■これが世界最先端・最高級のスポーツカー…?

 昨年発表された、フェラーリの新しいフラッグシップモデル・812スーパーファスト。

2017年3月のジュネーブショーで発表されたフェラーリ812スーパーファスト。「812」は800馬力のV12気筒エンジンを指す
2017年3月のジュネーブショーで発表されたフェラーリ812スーパーファスト。「812」は800馬力のV12気筒エンジンを指す

 デザインはピニンファリーナではなく、フェラーリ・スタイリング・センターによるもので、フェラーリによると、

「シルエットは滑らかなファストバックスタイルを描き、ハイ・テールの 2ボックス・スタイルは1969年の輝かしい名車 365GTB4 を想起させます。ボディ側面の彫刻的デザインは視覚的にショート・テール化し、力感あふれるホイールアーチが搭載するV12エンジンのアグレシブなパワーをフォルムで表現します」

 とのことである。

 私も先日、試乗する機会を得、カーマニアの聖地・首都高辰巳パーキングで、自然光の下でじっくり眺めたが(これも前澤さんの教え)、550マラネロ以来、FR化されたフェラーリ12気筒フラッグシップモデルの中では、最もシンプルで美しいと感じた。

 が、同時にこうも思った。「でも、マツダ・ロードスターのほうが上だな」と。

 もちろんこの2台、直接比較するような関係にはないが、純粋にデザインを比べれば、ロードスターのほうがよりシンプルで美しい。ロードスターのスタイリングは、小ささのハンデをまったく感じさせないのである。

 基本的にクルマは、デカければそれだけで迫力が生まれるし、フォルムをインプレッシブするのも簡単だ。

2015年5月に発売された4代目(現行型)ロードスター
2015年5月に発売された4代目(現行型)ロードスター

 前澤さんの至言として、私の脳裏に刻まれているもののひとつに、「クルマは幅を広くして平べったくすれば、どうやったってカッコよくなる」というものがある。

 つまり、スーパーカー的な全幅×高さを与えれば、カッコ悪くするほうが難しいのである。

 812は、全幅1971mm。まさにスーパーカーサイズだ。ただ全高は比較的高いので(1276mm)、平べったさはそれほど強くはないが、4657mmという全長を生かし、キャビンをより後ろ寄りに持っていくことで、超パワフルなFRスポーツカーの力感をみごとに表現している。

フェラーリ812のリアスタイル
フェラーリ812のリアスタイル

 一方、コンパクトなロードスターには、そんな芸当はできない。しかも、全幅(1735mm)や全長(3915mm)がコンパクトな中で、全高(1235mm)はある程度確保しなければ頭がつかえてしまうから、どうしてってズングリしたフォルムになるはずだ。

しかしロードスターには、ズングリ感は微塵もないし、このサイズでありながら、スーパーカー的な迫力さえ、見るものに与えている!

本当のホントの話、私はルームミラーに小さく映ったロードスターを見るたびに、一瞬「スーパースポーツか?」と目を凝らしてしまう。

 後姿はさらに迫力満点だ。前述のように全幅はわずか1735mmだが、お尻を思い切り絞り込みつつ、キュッと絞り上げることで、超グラマラスな形を実現しているのだ!

こちらはマツダロードスターのリアスタイル
こちらはマツダロードスターのリアスタイル

 実際に812スーパーファストとロードスターを並べて見たら、おそらくロードスターのほうが、どこにもムダのない美しいフォルムであることが理解できるだろう(確信)。

■ロードスターは「パーフェクト」

 近年のFRフェラーリのデザインには魅力はない、812だってぜんぜんカッコよくない、ロードスターが勝つのはアタリマエ! とおっしゃる方もいるだろう。

 じゃ、旧世代最後のFR12気筒フェラーリである、365GTB/4、通称デイトナと比べたらどうか?

フェラーリ365GTB/4。1968〜1973年まで生産された
フェラーリ365GTB/4。1968〜1973年まで生産された

 たしかにデイトナのフォルムは、812よりずっとシンプルで美しい。パネル面にデコボコしたところはほとんどなく、ツルンと実に滑らかだ。

 しかし今度は逆に、ロードスターと比べると、シンプルというより単純すぎるように見える。デイトナに比べるとロードスターのフォルムは、どこを見ても微妙にうねっており、女性の体そのもの。デイトナには、そういう有機的な部分が足りない(断言)。

 最大の弱点(なんて言っていいのだろうかとためらいつつ)は、タイヤ、特に後輪が引っ込んでいて、かつ腰高なことだ。古いクルマなので仕方ないし、これはこれで味わいだが、ロードスターのきっちりツライチに近いタイヤ&ホイールの位置や、バランスの取れた車高はパーフェクト。

 はっきり言おう。ロードスターはデイトナより美しい!

■アストンマーチンにも勝利!!

 では、現行モデルで最も美しいFRスーパースポーツクーペと私が考える、アストンマーティンDB11と比較したらどうか!?

2016年3月のジュネーブショーで発表。アストンマーティンDB11、写真は「ヴォランテ」
2016年3月のジュネーブショーで発表。アストンマーティンDB11、写真は「ヴォランテ」

 アストンマーティンは、どのモデルも古典的な美をたたえつつ、見事にモダナイズしているが、中でもDB11は最もそそる。微妙にツンと上を向いたあご、そしてより深く官能的なウエストのくびれ。清楚でいてエロティック。まさに究極だ。

 が、それでも私は、ロードスターのほうが一枚上ではないかと考える。

 最大のポイントはお尻だ。アストンのお尻も美しいが、あまりにもバランスが整いすぎていて、印象に残らない。テールランプの造形も、ボディに溶け込みすぎている。

 その点ロードスターのお尻は、ほんの少しだけ上を向きすぎていて、それが心に刺さる。最高にセクシーだ。円と突起からなるシンプルなテールランプもインプレッシブ。この勝負もまた、ロードスターの勝利である!

 DB11にも勝ったということは、ロードスターのデザインは、現行モデルで世界一ということになるわけですが、お墓の下の前澤さんはなんて言うだろう……。私が考えもしない欠点を指摘して、「まったくダメ」と言いそうな気もする。

 前澤さんのデザイン評論は、最後まで予測不能でした。涙。

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