■足の不自由な家族のために、ワンオフで乗降用グリップを取り付ける
これは、筆者の先輩営業マンが行った裏メニューである。夫婦で乗る高級セダンを購入したオーナーがいた。旦那さんがクルマ好きで、このセダンを購入する背景には、旦那さんの強い思いがあったようだ。
しかし、基本的に運転するのは奥様である。それは旦那さんの体が少し不自由だったから。クルマ好きな旦那さんの特等席は助手席だ。しかし、クルマはセダン、乗り降りが楽とはお世辞にも言いにくい。
そこで、乗り降りの際に掴まり、体を支えられるグリップを取り付けることにした。もちろん当該車種オプションに、補助グリップの設定はない。
場所は助手席側ダッシュボードの上、エアバッグの出てくる場所を避けながら、効果的にグリップが使える場所をオーナーと打ち合わせた。室内の質感に合わせ、グリップの素材には木材を用意する。内装に合った金具も準備し、ワンオフでグリップの製作に入った。
ガッチリとダッシュボード左側、ドアを開けて手が届く場所に取り付けられたワンオフのグリップは、内装の雰囲気を壊さずに充分な機能性を確保した。お客様の「困った」に真摯に対応し、そのクルマを最も心地よく使える方法を考えた、スタッフ考案の裏メニューだ。
■ユーザーが詳しく調べたフォグランプを取り付け
30系プリウス後期型を新車販売した際のこと、フォグランプバルブを変更したいから、前期型のフォグランプユニットを取り付けてほしいというオーダーがあった。
部品形状は同じであり、交換自体も難しい作業ではなかったので、引き受けたが、前例のない交換作業であり、取り付けるまで交換依頼の意味がわからなかった。
部品コードは違うが形の同じフォグランプユニットをよく見ると、後期型のレンズがプラスチックなのに対し、前期型のレンズにはガラスが使用されている。
ワット数が大きいフォグランプバルブを装着すると、プラスチックレンズは焼けたり溶けたりする。前期と後期で材質が違うのを知っていて、ユーザーは後期型のプリウスに前期型の部品をつけてほしいと頼んできたわけだ。
普通に販売・サービスを行っているだけではわからなかったことを、裏メニュー対応で知ることもある。イレギュラー対応を受けるのは大変なことが多いが、同時に勉強になることも多い。
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今回紹介した裏メニューは、あくまでも特例である。すべてのディーラーで同じことをしてくれるわけではない。引き受けてくれないお店の方が大半であることを理解してほしい。
イレギュラーな対応をするには、相応の時間とお金、そして人と人との信頼関係が必要になる。
裏メニューは、基本的に「できない」前提だ。そこを理解したうえで、心に余裕を持ち、裏メニューをオーダーすると、販売店が引き受けてくれる可能性は高くなるだろう。
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