車は高価な買い物だ。だからこそ、真剣に購入を検討している車であればあるほど、良い部分だけでなく、ネックとなる欠点も知っておきたいもの。本記事では直近で特に評価の高い6台のモデルを紹介する。それゆえ語られることが少ないネガも含め、車選びの判断材料にしてほしい。
文:渡辺陽一郎/写真:編集部
セレナ e-POWERはシートアレンジに制約

S(スマートシンプル)ハイブリッドを搭載したセレナでは、多彩なシートアレンジが特徴だ。2列目の中央部分を1列目の間までスライドさせ、収納設備として使える。
ところが同じセレナでも、e-POWERではこの機能が省かれてしまう。前席の下に駆動用リチウムイオン電池が搭載され、1/2列目の間に長いスライド機能を装着できないためだ。
そうなるとe-POWERでは2列目を横長のベンチシートにする必要がなくなり、人気の高いセパレートタイプのキャプテンシートに変更した。それでも多彩なシートアレンジはセレナの特徴だから、これが省かれたのはセレナe-POWERの欠点になる。
Sハイブリッドを含めたセレナ全体の欠点には、3列目シートの剛性不足がある。3列目に乗員が座った状態で車体が揺すられると、3列目の脚の部分が不自然な動きをする。乗員が着座姿勢を変えただけでも、ユラユラと揺れることがある。
車両の基本設計では、ライバル車のトヨタ ヴォクシー/ノア/エスクァイア、ホンダ ステップワゴンに比べて床が70mmほど高く、乗降用のステップを介して乗り降りする。乗降性が悪く、高重心になるから走行安定性と操舵感にも良くない影響を与えている。
装備では運転支援の機能は充実するが、緊急自動ブレーキを作動できる安全装備は、作動速度の上限が80km/hに限られてしまう。
高速道路での安全性を考えると、車両に対しては、100km/hまで対応して欲しい。
大人気N-BOXは標準エンジンがパワー不足
自然吸気のノーマルエンジンでは、実用回転域の駆動力が不足する。車重は標準ボディの「G・Lホンダセンシング」でも890kgで、市街地の運転感覚を左右する最大トルクは6.6kgm/4800回転にとどまるからだ。
先代型に比べると改善されたが、依然としてボディは重く、実用回転域のトルクも足りない。
不満を感じた時はターボを検討したい。最大トルクは10.6kgm/2600回転に高まるから、ノーマルエンジンの1.6倍に増強され、発生回転数は実用域に設定される。
ノーマルエンジンに比べると運転がしやすく、JC08モード燃費は25.6km/Lだから、約5%しか悪化しない。
しかも、ターボの価格換算額は、装備の違いを補正すると約5万円に収まる。この優れたターボに比べると、ノーマルエンジンは不満が多い。
内装では、メーターをインパネ最上部の奥まった位置に装着した。メーターを見る時の視線と目の焦点移動は小さいが、小柄なドライバーが座ると圧迫感が生じやすい。
収納設備では、ポケット類は豊富だが、フタの付いたボックスは少ない。また、荷室の開口部は広いが、リヤゲートの上下寸法も長くなるため、開閉時には後方への張り出しが大きい。縦列駐車をしている時などは、リヤゲートを開閉しにくい。
ボルボ XC40はサイズの割に扱いにくい

全長は4425mmだから、SUVではコンパクトとミドルサイズの中間だが、全幅は1875mmとワイドだ。最小回転半径も5.7mと大回りで、ボディがせっかく短いのに、街中で運転しにくい。
しかも、着座位置に対してサイドウインドウの下端が高いから、車両に潜り込んだ印象になる。外観を水平基調で仕上げた割には、周囲の死角が大きく、さらに運転がしにくくなる。
後席側のサイドウインドウは後端部分を切り上げた形状で、ボディ後端のピラー(柱)も太い。従って斜め後方の視界も悪く、購入するなら縦列駐車などを試したい。
後席の頭上と足元の空間はさほど狭くないが、座面は短いから、大腿部の支え方が不満だ。座面の柔軟性も不足して、やや平板に感じる。後席の使用頻度が高いユーザーは、居住性を確認したい。
このほかタッチスクリーン式の9インチセンターディスプレイは、慣れないと操作しにくい。
人気HV、アクアは室内空間の狭さがネック

全高が1455mmと低く、後ろに向けて天井を下降させたから、特に後席が窮屈だ。着座位置も低く、膝が持ち上がる。
身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ半だから、フィットの2つ半に比べると大幅に狭い。
足元が狭めで着座位置も低めだから、乗り降りもしにくい。3~4名で乗車するユーザーは、後席の居住性と乗降性に注意したい。
積載性も不満だ。天井が下降しているから、荷室高が不足した。後席のアレンジも単純で、背もたれを前方に倒すだけだから、広げた荷室の床に段差ができる。
走りに関連した機能では、発売当初に比べて改善を受けたものの、今でも乗り心地が硬い。足まわりの動きに、もう少し柔軟性が欲しい。
サイドウインドウの下端を後ろへ持ち上げて、ボディ後端のピラーが太いから、斜め後ろの視界も悪い。
CX-5は安定性と2Lエンジンの割高感に注意

現行型の乗り心地は、先代型に比べて快適になったが、危険を回避する時などの走行安定性は悪化した。
特に2WDの2.5Lガソリンエンジン搭載車は、良く曲がる代わりに後輪の接地性が削がれやすい。
先代(初代)CX-5の足まわりは、基本的なセッティングを欧州などの海外仕様と共通化したが、現行型は日本専用の仕様になって快適性が優先された。
全長は4545mmに収まるが、全幅は1840mmとワイドで、最小回転半径も5.5mだから、取りまわし性は良くない。ボディ後端のピラー(柱)も太めで、縦列駐車や車庫入れは不得意だ。
ガソリンエンジンは、4WDであれば全車が2.5Lだから動力性能に不満はないが、2WDでは「20S」と「20S プロアクティブ」が2Lになってしまう。
SUVでは走りの良さも大切な魅力だから、車両重量が1500kgを超えるボディに2Lエンジンでは、力不足になりやすい。
しかも、2WDと4WDの価格差は、共通のエンジンを搭載するクリーンディーゼルターボでも、2WDが2L/4WDが2.5Lに区分されるガソリンでも、22万6800円で差を付けていない。
つまり、ガソリンエンジンの4WDでは、22万6800円の上乗せで2WDが4WDに変わり、500ccの排気量までプラスされるわけだ。そうなると2Lの2WDは、動力性能が不足して価格も割高になってしまう。
CX-5やアテンザは、2Lにこだわる法人需要が見込まれる最廉価の「20S」を除くと、すべてのガソリンエンジンを2.5Lにすべきだ。
王道プリウス、要改善点は乗り心地と視界
走行安定性のバランスが悪い。先代型に比べると機敏に良く曲がってスポーティだが、旋回中に危険を回避する時などは、後輪の接地性が削がれやすい。 このバランスの不満は、高重心でありながらC-HRで大幅に改善され、低重心のカローラスポーツでも良くなった。これら改善の成果は、今後プリウスのマイナーチェンジで反映される。
また、プリウスは乗り心地でも改良の余地を残す。タイヤが路上を転がる時に発する騒音も耳障りだ。デザインでは、外観が鋭角的だから、斜め後方の視界も悪い。
後席に座った時の閉鎖感にも注意したい。サイドウインドウが狭いために側方が見えにくく、天井を後方に向けて下げているから、頭上の空間も不足した。荷室についても、床面積は広いが、背の高い荷物は積みにくい。