■e-fuelの実用化によって日本が世界をリードできる
本郷 e-fuelの開発を加速させるには何が重要とお考えでしょうか? また日本はこの分野で世界をリードできるとお考えでしょうか?
佐藤 これまでは自動車メーカーも石油メーカーもe-fuelに踏み込んでいいのか? 政府の動きを見ながら……というところはあったと思います。しかし、成長戦略フォローアップに明記されたことで、国もしっかりと対応し、研究開発のための支援策を用意する必要はあると思います。
一方で、自動車メーカーや石油メーカーには、政策的方向性を待つのではなく、みずからの業界で産業を創り、政策をリードするという気概で、もっと積極的に行動してほしいと思います。先ほどの豊田章男社長のチャレンジが物語るように、熱い思いが政治を動かすということもあります。
また世界を日本がリードできるかについては、おそらくe-fuelの開発は日本と欧州、特にドイツとの戦いになろうかと思います。アメリカはシェールガスがありますから、e-fuelへの急激な切り替えは難しい。従って、国家レベルでという話には少し時間がかかるであろうと思います。
一方、日本は技術力としては高いものがあると考えますが、いかに低コストで製造できるかがカギとなります。そのためには船舶や航空機といったCO²の排出が多く、電動化が難しいという理由からe-fuelの大口需要が見込める産業とタッグを組み、コストを下げることが重要と考えます。そうなれば自動車ユーザーもガソリンやディーゼルに代わる燃料として選択できるようになり、これを早く実現するこで日本はe-fuelで世界のリーダーシップをとれるはずです。
本郷 e-fuelはエネルギー密度が高く、アウディやポルシェが開発に積極的なようにe-fuelで内燃機関のスポーツカーが存続できるとしたら、クルマ好きには朗報です。
佐藤 ポルシェがe-fuelのニューモデルを公表したら、それこそビッグニュースでしょう。
■大阪万博がe-fuelをアピールする大きなチャンス
本郷 e-fuelは再生可能エネルギー等で水素を生成することが必要です。福島の浪江町でグリーン水素を製造していますが、まだグリーン水素はわずかしか流通していません。これから水素をどうやって作っていくべきか、お聞かせください。
佐藤 水素はカーボンニュートラルを実現するための心臓部となるものです。現在政府は輸送コストをかけて、わざわざオーストラリアから褐炭で製造した水素を輸入しようとしていますが、褐炭を燃やす段階でCO2は排出されます。このような水素をブルー水素と呼びますが、多少コストが高くても水を電気分解したり触媒により水素を製造するグリーン水素を作っていかなければ、水素の本質は変わらず、普及も進まないと思います。
2025年に私の地元でもある大阪で万博が開催されます。それまでには大阪周辺にもグリーン水素製造施設を整備し、グリーン水素とDAC(CO2を大気中から直接回収する技術)で回収したCO2の合成によるe-fuelを製造する展開ができればと思います。万博では単なる技術の展示に終わらず、これらの技術の連動により訪れるであろう未来社会の姿を実際に体験できるような展開が必要です。この意味で、e-fuelが、国交省が推進する空飛ぶタクシーなど、会場で使うさまざまな先進モビリティの燃料として使われ、来場者の皆さんに楽しんでいただけるようになればと考えております。
本郷 それはすばらしいアイデアですね。e-fuelを大いにアピールできるし、ワクワクしますね。e-fuelの普及に向けた取り組みに自動車ファンは期待しております。ありがとうございました。
★ ★ ★
佐藤ゆかり
東京都世田谷区出身、大阪11区選挙区の自由民主党 衆議院議員。経済学博士・自民党政務調査会 経済産業部会長。16年間の海外在住により堪能な英語で国益のため経済交渉に向かう新たな保守政治家。環境副大臣、総務副大臣、経産政務官等、中央大学大学院経済学客員教授等、歴任。
コメント
コメントの使い方