■ランクル300の指紋認証はどれくらい効き目がある?
いずれにしても、ランドクルーザーが盗まれやすいクルマであることは確かだろう。そこで気になるのは新しく発表されたランドクルーザー300の盗難防止対策である。
とくに日本車初採用となる「指紋認証によるセキュリティシステム」が話題だ。詳細はまだ明らかにされていないが、エンジンスタートのプッシュボタン(指をあてて押す部分)などで指紋認証を行う仕組みとなっている。当初はロシア仕様などに標準採用という情報があったが、日本仕様でも全車標準装備となる模様。(ベストカーwebの記事より)
指紋認証自体はそれほど新しい機能ではなく、スマホのロック解除でもおなじみだし、自動車の盗難防止という例ではヒュンダイが2019年よりヒュンダイ・サンタフェにて導入している。
ヒュンダイのシステムでは指紋が登録されたドライバーの指紋を他者の指紋として誤認する可能性はわずか5万分の1とのこと。
指紋認証は生体認証の一種で、身体や人の行動の特徴を測定し分析する。指紋や声、顔の骨格などの生体情報は人によって異なるため認証への活用が容易にできる。
コスパにも優れており信頼性も高い。これなら、盗難防止のための新しい機能としてとても有望だろう。ランクル300の盗難が劇的に減ることにも期待できる。
と、思いたいところだが…実はそんなに甘いものでもなさそうだ。カーセキュリティの専門家、自動車盗難情報局を運営する撹上智久氏に聞いてみた。
セキュリティの専門家である撹上氏は「指紋認証は半年~1年で役立たずになる」と予想する。
「おそらくランドクルーザー300が発売されてから、半年間くらいは指紋認証の効果がある程度でてくるでしょう。しかし、それもおそらく半年から1年で終わるでしょう。指紋認証自体が悪いということではなく、メーカー純正のセキュリティシステムであることが問題です。
つまり、他の純正セキュリティと同様、1台解析されてしまえばあとは同じ方法で解析して、いとも簡単に盗まれることが十分に考えられます」。
さらに撹上智久氏はこう続ける。
「また、指紋が一致しないとしてドアが開けられず、またプッシュボタンが押せなかったとしても、現在多発しているキャンインベーダーという方式ではCANに直接入り込んでいきます。そもそも、プッシュボタンはスルーされていますからこの手口に対しては意味ないですね。
おそらくほかの対策も盛り込んで来るでしょうが、今までと変わらずイタチごっこになるでしょう。最終的には後付けの純正とは全く別の回路で動作するカーセキュリティ以外、守る事は難しいと考えます。
ディーラーにて車検や整備をする時には勿論エンジン始動出来る方法があるはずですので、指紋認証されなくてもエンジン始動の方法はありますね。
発売されてから2~3年した頃に、『指紋認証のシステムは発売されて半年した頃にはもう解析されていたんだな』ということに気づくと思われます」。
■窃盗団はどうやって指紋認証を解析する?
なるほど、向かうところ敵なし! と思われた指紋認証のシステムもCANインベイダーでは無意味だろうし、指紋認証自体を解析されてしまえばあとは一網打尽となりそうだ。
では、窃盗団は販売されたばかりの新型ランドクルーザー300の指紋認証どうやって解析するのだろうか?
これは実に簡単だ。善良なほかのオーナーと同様にランクル300を購入し、時間をかけてゆっくりと確実に諸々のセキュリティシステムを解析していく。完了したら中古車として売却すればOK。ランクル300などの人気車種であればリセールバリューも高額なものが期待できる。
タイミングによっては新車価格より高額な値段で買い取られる可能性もある。窃盗団はボロ儲けだ。多くが保険に入っているため、深追いされることもあまりないという。
また、ドイツ車を扱う輸入車ディーラーの整備担当者いわく、
「レクサスLXやランドクルーザーなど、日本の高級車全般にいえることですが、セキュリティに対するメーカーの考え方、お国柄もあるのでしょうか? 全般的に緩い印象です。キーとクルマの通信時に暗号化する際も、桁数がドイツ車と比較してレクサスは半分ぐらいなのです。だから、解読が簡単なんですよ」とのこと。
クルマの設計段階で自動車盗難への危機感が薄いということなのだろうか? 治安の良い日本はオーナーの危機意識も薄い。窃盗団にしてみれば盗難天国なのかもしれない。
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