現行型スープラ販売から2年 スープラはどれだけ偉大な存在なのか

現行型スープラ販売から2年 スープラはどれだけ偉大な存在なのか

 熱狂をもって迎えられた2019年のデビューから2年。最近では話題も鎮静化しつつある現行トヨタ スープラ。

 トヨタ単独では採算が取れないであろう『スープラ復活』というプロジェクトを、BMWとの協力関係で実現にこぎつけたトヨタの企業努力には本当に頭の下がる思いだが、はたしてスープラはトヨタが描いた通りの方向に向かって進んでいるのだろうか。

 あれから2年。スープラの今を鈴木直也氏が追った。

文/鈴木直也、写真/TOYOTA

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■ドイツBMWの血で蘇ったスープラ

2019年、熱狂に迎えられてデビューを飾ったトヨタ スープラ。実に17年ぶりの復活となった
2019年、熱狂に迎えられてデビューを飾ったトヨタ スープラ。実に17年ぶりの復活となった

 現行90スープラがデビューしてはや2年。デビュー時の熱狂ぶりは沈静化し、最近はメディアの記事露出も少なくなった。

 まぁ、とりわけスポーツカーの新車が出ると大はしゃぎするが、そのテンションが長続きしないのがわれわれ自動車メディアの悪い癖。この種の少量生産車は街であんまり見かけないから、すぐ「スープラもいまいち売れてないねー」といったオチをつけたがる。

 しかし、クルマを造る側としては、そんなことは先刻ご承知のうえだ。

 バブル期なら過大な需要予測をもとにイケイケでスポーツカーを開発することもできたが、いまはきちんとした需要予測をベースに、予定生産台数に最適な生産システムの構築が必須。

 90スープラはその典型的な例で、トヨタ自身が単独ではとても採算が取れないプロジェクトと認識しているから、BMW Z4とのコラボレーションという方途を選択したわけだ。

 その結果、開発はBMWをメインとして、トヨタはスープラ独自のデザインと走りの味付けを担当。少量生産車種の受託で定評のあるオーストリアのマグナ・シュタイアの工場で造られることとなった。

■90スープラは「細く長く」順調に

スープラのようなマニア向けともいえるスポーツカーは「細く長く」生産を続けることでビジネスとして成り立つという側面がある
スープラのようなマニア向けともいえるスポーツカーは「細く長く」生産を続けることでビジネスとして成り立つという側面がある

 結果を評価するにはまず売れ行きだが、グローバルでみた販売台数はデビューから1年でざっくり1万台弱。

 デビュー直後から大量のバックオーダーを抱えたうえ、コロナの影響が深刻化する前の1年間でこの販売実績ということは、たぶんマグナへの委託生産契約がこのくらいの規模ということ。最初からこれ以上造る気もないし、この台数でモデルライフ全体の収益計算が行われているのではないかと思う。

 そういえば、以前ホンダS660の生産現場である八千代工業を取材したとき、担当者が「少量生産車に最適化したラインでコストダウンを徹底し、どんなにバックオーダーが増えても絶対に生産能力増強は行わない」と明言していたのを思い出す。

 スープラやS660みたいなマニア向けのスポーツカーは、とにかく細く長く造り続けることが重要で、それが採算性を確保するためのカギ。そういう意味では、90スープラは予定どおり順調にプロジェクトが進行していると評価すべきだと思う。

 そのひとつの証拠として、北米市場、日本市場、ともに販売台数が比較的安定していることがあげられる。

 日本市場はデビュー最初の一年で約2900台の登録だったが、2年目はコロナ禍にも関わらず約1200台ほどを販売。北米市場は暦年データで2019年が約3200台、2020年には約6300台という実績。さらに、北米は2021年第一四半期には約2600台と、年間1万台に届くペースまで販売が加速している。

 90スープラの価格は、日本では約500万円〜730万円。北米では4.3万ドル〜5.5万ドル。いずれにしてもかなりの高価格車といっていい、。利幅の大きいプレミアムゾーンの車を、毎年毎年1万台づつ売り上げたら商品としては優等生。

 前述のとおり、スポーツカーは細く長く造り続けることが重要。スープラはサステイナブルなビジネスという意味で、きちんとその役割を果たしているといっていい。

次ページは : ■スープラの存在意義は売れ行き以上に大きい

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